鳥籠が鳥を探す・K 公演情報 鳥籠が鳥を探す・K」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    万有引力とは
    ひき合う孤独の力である

    宇宙はひずんでいる
    それ故みんなはもとめ合う

    「二十億光年の孤独」谷川俊太郎

    先日92歳で亡くなられた谷川俊太郎氏のこの詩から取られた劇団名『万有引力』。

    鳥が鳥籠を探し求めているのか
    鳥籠が鳥を探しているのか

    開幕前、ニーノ・ロータ調のテーマ曲がエンドレスで流れている。時折チェコの首都プラハにあるフランツ・カフカの生家らしきモノクロの写真が明滅する。ヴァイオリン片手にふらりと現れた多治見智高ジーザス氏が舞台を開く。
    1912年、オーストリア=ハンガリー帝国(現チェコ)で労働傷害保険局員の仕事の合間に小説を書いていたフランツ・カフカ(小林桂太氏)。フェリーツェ・バウアー(森ようこさん)と出逢い夢中になる。手紙魔だった彼は狂ったように手紙を送り、後に彼女が保管しているだけで500通以上もあった。一日二通送る程の狂熱。二人の共通の知人であるマックス・ブロート夫妻(加藤一馬氏、木下瑞穂さん)が相談に乗る。段々と彼の手紙に夢中になっていくフェリーツェ。カフカは書き始めた『変身』について綴っていく。

    グレゴール・ザムザに髙田恵篤氏。だが彼は毛布を引っ被ってほぼ姿を見せようとしない。『エレファント・マン』のようなニュアンス。
    父親に今村博氏、母親に伊野尾理枝さん、妹に山田桜子さん、女中に内山日奈加さん(久々の登場!)、雇い主に髙橋優太氏。

    J•A•シーザー氏の楽曲の強さが全開。ド迫力で持っていかれる。前半の強さに圧倒された。役者達はまるで人形のように何かに操られているかの如く動く。時折、猿山の猿のようにも。人間を使った贅沢な人形ごっこ。
    森ようこさんが光り輝いていた。
    凄く面白いので是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    原作をガキの頃に読んだ筈なのだが、全く後半の展開を覚えていなかった。何かグレゴール・ザムザが拳銃自殺したような記憶。こんな話だったのか。序盤の手紙の遣り取りの調子が凄く良かったので『変身』のパートに停滞を感じた。個人的にはもっとカフカとフェリーツェの遣り取りを挟んで欲しかった。

    熱烈に恋したカフカだったが、二度の婚約も破棄して結局は別れることに。結婚することによる創作への妨げを恐れたとされる。だが恋して昂揚している自分が好きだったんじゃないだろうか?昂揚する為に相手が必要だった。鳥籠が鳥籠である為に鳥を探すように。

    ※J•A•シーザー氏は自身の死と劇団の終焉を見据え、カフカの言葉に自らを託している。(カフカは40歳で肺結核で亡くなる)。終わりとはまた新たなる始まりであると。

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