実演鑑賞
新国立の研修所生公演で「ロミジュリ」は新鮮に見た。岡本健一の演出は民藝アトリエ「破壊」公演で一度目にし、自身による劇伴(ギターによる)を今回も使っていたが、効果的。対面客席(バルコニー席を入れると四面)の中央に正方形のリングのような台、周囲を客入れ時間から台詞を言いながら騒がしく歩き回る。両家の「争い」の側面が強調され、戦争が続く現在の世相を目の当たりにするような視覚的な演出が際立っていた(上演台本も岡本氏による)。
実演鑑賞
満足度★★★
新国立の演劇研修生制度は、初期の(三代目か?)の芸術監督だった栗山民也の新国立を日本の現代演劇の基礎を固める場所にする構想の一つとして成立した(と記憶している)、それからほぼ20年、18期の修了生の公演である。国立の古典芸能養成はもっと長い実績があり、現に今の歌舞伎はこの養成所出身者がいなくては大歌舞伎も文楽も上演できない(もし欠ければ上演の質は確実に落ちる)と言われている。古典の方は、伝統の制度と新しい研修制度がかみ合って舞台が成立しているが、現代演劇の方はなかなか上手くかみ合わない。しかし、現代演劇もここのところ元気が良いだけではろくなことにならないと解ってきて、周囲を見渡せば、この研修所出身の俳優たちが大小の舞台でしっかり舞台を固めている。
このロミジュリは、岡本健一の演出。中央に三間四方の黒の裸舞台を置き、男女全員同じ委ギリシャ風の衣装の出演者はその周囲を回ったり台に上がったりしながらそれぞれの役を演じ台詞を言う。かつて蜷川が日生劇場で公演したロミジュリを全キャストに拡大して全員で青春を演じる。今まで見たこの研修公演は近代以降の戯曲をほぼ、戯曲に沿った解釈で演じる舞台が多かったが、これは、ダンスに連なる新しい舞台訓練も収めた終了公演である。1時間半ほどにまとめているが、ほぼ全編声を出し動いていなければならないので若い研修生も大変だ。後半は声もかれてヘトヘトという感じである。
舞台そのものの成果を問う公演ではないが、最近の俳優はこういう研修から生まれていると知った。ここ
栗山民也の後、内外トラブル続きで舞台の成果も見るべきことがなかったこの劇場も芸術監督も替わることだし、心機一転現代劇の基礎を固めるという栗山の初期の構想に戻って日本の現代演劇を分厚いものにしてほしいものだ。