江古田通りを曲がって 公演情報 江古田通りを曲がって」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    江古田の短編集、今回で3回目 シリーズと言っていいのかな。とても滋味に溢れ 心に染み入る公演。
    劇団名の通り 畳(タタミ)二畳の空間にシンプルな舞台セットを配置し、日常のありふれた光景を切り取った短編2編。観たのは、「A.箱根旅行の思い出」と「D.あるいはピクルス」で、趣が異なる作品でとても面白かった。当日パンフで劇団二畳プロデューサー 四方田直樹 氏が「物事が進まない人たちの物語」と記しているが、それは その時代に生きた世代によって捉え方は異なる。

    公演の魅力は何といっても、アクティングスペースまで50㌢ほどの至近距離で演技を観ることが出来るから、表情は勿論 細かい動作まで分かる。あまり全体を観る必要もなく 勿論 俯瞰するなんてこともない。ありふれた光景ゆえ、共感や納得等することが多い。子供の頃の思い出とは別に、親になって初めて気づかされる場面もあって苦笑。人の機微をしっかり捉え表現しているところが凄い。

    「A.箱根旅行の思い出」は、タイトル通り 1990年代 箱根への旅行、宿で家族団欒のひと時を過ごすはずが、何故か楽しめない。旅先だから といった特別・非日常を大切にするか、旅行も日常の一コマと捉え淡々と過ごすか。ラスト、祖母が孫娘(次女)に囁いた言葉が強烈だ。

    一方「D.あるいはピクルス」は、日常の生活というよりは、過去と現在の時間が或る出来事(事故)で分断され、新たな暮らしを得た といった不思議な心情を描いている。登場人物は3人で、始めはその関係がどうなっているのか戸惑うが、だんだんと事情が分かってくると少し切ない。
    (上演時間70分 1話/2話の転換に2分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    ●「箱根旅行の思い出」
    1990年代の初頭、松田一家は箱根に家族旅行に来ているが、二人の娘(長女:北斗と次女:昴)は携帯ゲーム機でロールプレイゲームに夢中。せっかくの箱根旅行だが、観光なんかそっちのけ。父 司郎は湯上りにビールを買おうとしたが 高いため躊躇する。母 桃子だけは楽しんでいるが、家族の思いはバラバラ。司郎の金を使ってまで旅行なんて という思いは実感。両親と娘たちのゲームを巡る攻防は、その都度 昴が仲に入り取りなす。祖母 金子かのえ は、昴に向かって「人の顔色ばかり見ないこと」と諭す。

    「あるいはピクルス」
    登場人物は3人。野口千佳が、この古民家(FOYER ekoda<ホワイエ江古田>)を訪問するといった感じで、会場入り口から入ってくる。チラシの説明によると、彼女は望まぬ形で関係を終わらせた中田伸雄のことが忘れられず、彼が現在交際している芝崎このみ と共に借りているアパートを訪れる。そのアパートが古民家。劇中、彼が事故で記憶障害になり、千佳のことが思い出せないと。過去の経緯が話されず曖昧、そこに千佳の未練と決別の思いが読み取れる。設定は20歳代のようだが、ずいぶんと大人びた雰囲気の会話劇。

    舞台セット…「箱根旅行」は宿の部屋、卓袱台と座布団、下手に古くて小さい和箪笥と黒電話。上手に温泉があるようで、湯上りの浴衣姿が旅情を醸し出す。一方「ピクルス」は、テーブルと椅子3脚。それぞれシンプルであるが、物語を紡ぐには十分。因みにゲーム機から漏れ聞こえるのは、ドラクエの神曲のようで 懐かしい。箱根旅行では、母 桃子が少し呆れて冷蔵庫の瓶ビールを飲みだすが、その時にビールの香りが…。湯上りで温泉の独特の匂いが漂えば完璧か。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    本当に狭い古民家だから、役者と面と向かう感じだが、皆いい表情をしていた
    旅行の思い出はお母さんがひとり思い出作りに奮戦する感じだが、家計の事情など今の若い人には「そんなに?」という感覚かもしれないものの、自分らの子どもの頃には「そうだよな、なかなか家族旅行なんてね」というところもあって大いに共感できた(特にお父さん)
    たきざわちえ象さんが分かっているのかいないのかのとぼけたおばあさんを好演
    お母さんのイライラの様子も良かったな
    その最初と最後の呼応もなるほどと思わせた
    早坂君は訪ねてきた昔の教え子を思い出せず、昨今の事件のような詐欺か強盗と勘違いしてひと騒動
    ちえ象さん早坂君でも良かったが、設定の年齢、病状からするとちょっと動きが俊敏過ぎたかな
    丸山小百合さんは「おっ、いつもと違っておしとやかじゃん」と思ったが、途中でちゃんといつもの感じになった(笑)
    やっぱり四方田さんの世界は、さりげない日常の中で起きるちょっとしたハプニングを温かく描いて、ほんわかした気持ちで会場を去ることができるから好きだな

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