満足度★★★
鎮魂の典礼
9.11テロの犠牲者を追悼するために書かれた声明曲の3.11の震災を承けての再演で、照明や動きの演出を伴った舞台作品として演奏されました。日常と異なる時間感覚で響く声や打楽器の音が神秘的でした。
前讃「無常偈」、唄「如来唄」「始段唄」、散華「散華上段・下段」、錫杖「三條錫杖」、総回向「生死」、終讃「無常偈」という式次第で進み、暗闇から始まり、青白い光、彼岸花を思わせる赤へ移行し、そしてまた暗闇に戻る色彩構成が人の一生を描いているようでした。「無常」と「生死」はネイティブ・アメリカンの言葉が歌詞として使われ、宗教を越えた普遍性が感じられました。
螺旋スロープや長い廊下が特徴的な空間を活かして僧侶達が極めてゆっくりと行列しながら進んで行く様子が美しかったです。「生死」では舞台上で独唱が歌われる中、他の20名以上の僧達達がそれぞれ自分のテンポでお経を唱えながら客席の両脇を通り過ぎて行き、さらにスピーカーから英語でネイティブ・アメリカンの言葉を読み上げる声が流れ、視覚的にも聴覚的にもインパクトがありました。
絶えずゆったりとした時間の流れの中で豊かな倍音が鳴り響き、80分弱の時間が一瞬でかつ永遠であるような不思議な感覚が心地良かったです。