実演鑑賞
満足度★★★
犬儒派(キュニコス派)とは古代ギリシャ哲学で「野良犬のように自然に与えられたものだけであるがままに生きていく」心の持ちようのこと。
6人の作家によるリレー探偵小説『江川蘭子』の第一回の江戸川乱歩執筆部分、同じく乱歩の短編『踊る一寸法師』、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』。この3作品を同時進行で語っていく。
行動主義心理学を生み出したジョン・ブローダス・ワトソンの学説を引用し、生後数ヶ月の環境によって人間の行動と心理の因果関係が決定されると語る乱歩。「支持の滅失」という独特な言葉が繰り返される。安全な安定した状態から危険な不安定な状態に不意に落とされる恐怖感を「支持の滅失」と呼んでいるようだ。
①江川蘭子は特異な環境で育ち、「支持の滅失」に悦楽を感じるある種の変態。死への恐怖にこそ魅せられる化物。才色兼備、運動能力にも長けた美少女が家出し、曲馬団(サーカス団)で空中ブランコ乗りになる。
②曲馬団の緑(ろく)さんは一寸法師(小人症)の道化役だった。いつも団員の玩具にされて虐められている。美人玉乗りのお花に惚れているがお花の方はからかって嘲っている。公演後の酒席の宴で余興として隠し芸大会が始まる。緑さんとお玉は美人獄門の大魔術を披露することに。
③ユダヤの王の義理の娘サロメは井戸に幽閉されている預言者ヨカナーンに恋をする。彼に拒まれたサロメはどんな手を使っても口づけをすると誓う。
壇上に4つの椅子。左端の天才ナカムラスペシャル氏は植本純米氏っぽかった。真ん中2つの椅子、橋本樹里さん、松葉麻里花さん、愛弓(あゆみ)さんはシーンによって入れ替わる。右端の宇鉄菊三氏は岸田森や内田裕也系の顔で声が独特、声優向き。
口周りに血が付いたり、「首」と書かれた紙に赤い糸で血痕が垂れていたり、赤い紙を血飛沫として撒いたりの演出。
オープニングのSEが布袋寅泰の『CIRCUS』。この曲のイントロの元ネタはボニーMの『怪僧ラスプーチン』だろう。ちなみに林あさ美の『ジパング』はモロの替え歌。