実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/20 (日) 13:00
ハプニングバーのプレイルームでイタしていた男女が消失してから3年、消失した男の妻が当時バーにいた面々を集めて真相を探るが……な物語。
序盤の登場人物紹介的な3年前パートこそきちんとしている(?)が、現在パートに入ると次々にタガが外れてゆき混沌混沌また混沌、みたいな。その最中にはそれまでの前提を覆すような台詞もあって、こういうのも好きなんだな。
あと、バー従業員の制服や返り血を浴びたシャツを筆頭とした衣裳、塗装が剥げかかったバーの壁、さらに「あのゲーム」を等身大にした大道具(なのか?)など舞台美術も特筆モノ。これが妙なリアリティを与えているんだよねたと思う。
ということでかつて見たことがある悪夢のような2時間弱を堪能。
がしかし、開演が定刻より9分も押した場合は終演後に何か一言あって然るべきでは?(苦)
実演鑑賞
満足度★★★★
初日からずっとまとまらないまま考えてる。金子さんがインタビューで仰っていた通り"やりたい放題"に"全部を詰め込んだ"作品だった。そして、その"やりたいこと"と"全部"の中に逃れようのない今があった。これまで以上に悪夢のような現実を、社会を、世界を穿つ鋭い視点。
「鋭い」の後に「切実な」と一度書いて消した。切実と言われる自身に対してのカウンターみたいな作品でもあった気がするから。 自分もまた暗部の一部なのだ、と言わんばかりの作品だった気がするから。そして、それはそのまま観客も等しく持ち得る、または持ち帰らざるをえない悪夢で混沌だろう。
観客にとっては過去作のどの作品に強く惹かれたかによって、そして演劇に何を求めるかによって本作の好き嫌いや賛否は分かれるけれど、作家や劇団にとってはこの悪夢と混沌、そして虚無こそが現在地であるからして、私はやはりそれを見届けることをいつだって選ぶだろう。 意図的にかはわからないけれど、個人的には『ノーカントリー〜』以降の作品の源流にある様々な要素を点在させているようにも見えた。そこに劇団のある種のシークエンスを見たりした気もするし、コラージュされた様々の集結にある種の臨界点を見た気もする。
実演鑑賞
満足度★★★
サブカルネタ、ネットミーム的な時事ネタ。
これらを剥ぎ取ったとき何が残っていたか?
虚無が描けていたとも思えませんでした。
刹那的にそれなりに起伏はある。
それなりに破天荒な展開や役者の力を楽しむことは出来たのですが、驚きや気づきは無かったかな。
総合的には水準以上だとは思います。
楽しめたのですが、期待のハードルを上げすぎたのかもしれません。
実演鑑賞
タイトルの『ビッグ虚無』が正に言い得て妙で、持て余すほどの巨大な虚無とどう向き合うか? つうか向き合えないからビッグ虚無じゃん!! という絶望の果てを描いているように感じられました。序盤は物語もあって、その筋が進んだり寄り道したりしつつ、徐々に世界が破綻していく。中盤から終盤にかけてずっと悪夢的な展開が続き、不条理であり、夢想的であり、その結末が幸福へ向かうはずもなく、崩壊的なラストを迎える。ただ、それが「つまらない」という感想ではなく、この世界観、この文体でしか描けない現代が必ずある。と思いました。
実演鑑賞
満足度★★★★
タランティーノや『バッファロー'66』を思わせる作劇。軽口な与太話から世界の構造を解き明かす。駄目人間の駄目な人生を駄目駄目に描きつつ最高に笑わせる。これは映画『フォーガットン』の思想を正統的に受け継いだ作品だろう。岩松了みたいな渋い顔で凝視させて貰った。
眠れない夜、何となく誰かに見られているような気がする。主人公の江原パジャマ氏は草薙航基を彷彿とさせる童貞を拗らせて“思想犯”になったような男。ヒロインの浅野千鶴さんはチェ・ジウ顔。
開幕するとハプニングバー。SEX目的で大学生3人組が足を踏み入れる。モグライダー芝のようなツッコミがキレキレの細井じゅん氏。常に挙動不審な大宮二郎氏。江原パジャマ氏は全く盛り上がらないトークを武器に安川まりさんを口説くが無論相手にされない。常に怒り口調の星野花菜里さん。店員の堀靖明氏。次に江原パジャマ氏は浅野千鶴さんを見て中学の時好きだった家庭教師に似ていると思う。「どこかでお会いしましたか?」何とはなしに話していると突如超自然的な現象が勃発、巻き込まれてしまう。
笑いに対するアンテナがパラノイアックで鋭敏。完全に気が違った人が正気を失う寸前に残したスレスレの文学。死ぬ程面白いが死ぬ程危険。まさしく「Folie à Deux」(フォリ・ア・ドゥ)=感応精神病。
超満員の駅前劇場、笑いの声が鳴り止まない地響き。
是非観に行って頂きたい。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/16 (水) 19:00
座席1階
作・演出の金子鈴幸の壮大な妄想ワールドが炸裂する。ラストに近づくにつれ収集がつかないカオスとなり、これはどう幕を引くのかと思いながら舞台を凝視、その結末は。カオスが加速し、幕を無理矢理引いたような状態になった。それが画竜点睛を欠くという感じもした。
ハプニングバーを舞台とした設定が面白い。男3人で訪れ、自称「童貞キャラ」の男がそこにいた女性を口説く場面から始まる。やりたいという思いを見せ隠ししながら男が懸命におかしな言葉を速射砲のように浴びせる場面でまず笑わせる。その後は、時事ネタを絡ませながら爆笑を誘う場面が何度も訪れる。
2時間弱の舞台で思い切り笑いたいという人にはお勧めだ。超絶面白いギャグもいくつかある。そして、舞台は一直線にカオスに向かっていく。
よかったのは、女性俳優陣だ。特に、安川まりと星野花菜里は実直に体当たりの演技を見せてくれる。
若者たちに大人気の舞台。客席と一体になった盛り上がりを体験できる。