リア王の悲劇 公演情報 リア王の悲劇」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    芝居づくりは大体前半が難しい。本作も同様で、大仰なセリフがなかなか胸に響いてこない。リア王(木場勝己)の人を見る目のなさが、あまりにも愚かで類型的で、感情移入できないのが大きな理由だ。荒野の嵐の場では、天井からふる本水を使って、見せ場を作るが、感情移入できないのでセリフが空疎に響くのが難点。エドガー(きちがいトム)との小屋での出会いのところなど、長すぎるのではないか。

    河合祥一郎の新訳は、原文の韻文の味を日本語に移そうとしている。七五調を土台にしたせりふは格調ある。エドガー(土居ケイト)が女性(姉)になること、道化(原田真絢=コーディリアと二役)が教訓話を歌うことが新しい。

    と、ここで配役を書いていて、道化とコーディリアを同じ女優が演じていたことに初めて気づいた。これは前例があるのだろうか。この戯曲、コーディリアが王に寄り添う大事な役なのに、あまりにも出番が少ないことに難を感じていた。たしかに、ちょうど出番が道化と交代する構成になっている(グロスターが目をえぐられた後は、道化はいなくなってしまう)(沙翁時代も二役やったのかもしれない)。
    そしてコーディリアも道化も王に「耳に痛い」真実を語る役だ。案外、コーディリアはフランスに嫁いだふりをして道化に身をやつしていたという解釈もあり得るかもしれない。

    だが、後半になるとがぜん面白くなる。グロスター伯爵(伊原剛志)が両目をえぐりとられる場面から後は、舞台上の悲劇と嘆きが身につまされ、引き込まれる。(ここで、若い家臣が命懸けで制止に入るのも真実味がある)。リア王が前半の怒りと狂気を脱し、狂気も正気も超越したかのような悟りに達した感じが、木場勝己のひょうひょうとした味によくあっていた。3時間10分(休憩20分)

このページのQRコードです。

拡大