実演鑑賞
満足度★★★★★
ダダルズを初めて観た日から今後二度と見逃すものか、それもできたら初日にと心に誓い、今回も類に漏れず待望の観劇。脳や内臓を揺すぶられる様な体感は健在だけど、今回はこれまでより主題が明確で、そのことによりさらに思考の深淵へと臨んでいく様に感じました。
自転車の蛇行という記憶の風景を語りながら、それがいくつもの物事と接着や剥離を繰り返し、やがて部屋の湾曲に繋がっていく。物理的な意味合いでも精神的な意味合いでも人間の心身に発生する歪みや揺らぎ、つまりカーブ。同じことを体験したわけでもないのに痛くなるのは、同じではなくとも確かに自分の中にも、あるいはその部屋にも存在するそのカーブに触れられたからなのだと感じたり。そして、そのカーブは例えば老いゆく母の背骨や日々刻まれていく自分の皺を彷彿させ、やるせ無さがさらに募る。
人が生きていく上で抱えざるをえないトラウマとかやるせない気持ち。そういう個人的な「どうしようもなさ」にどこまでもどこまでも対峙して、今回もまたあんなにも溢れながら「渇き」を開示する大石さんに魅せられ、知らされました。
町や職場に見る"行き場のないオバハン"に母や自分の姿を重ねるときに湧き出る哀しみや怒り。「どうしようもなさ」にジタバタしてもがき、されどもジタバタしてもがくことを決してやめない大石さんの姿はやっぱり理屈とか理性とかを超越した何かを私の心身に残していく。
小5娘をチャリ後ろに乗せて帰宅してから観るにはあまりに痛切な主題だった。忘れない。
次回は10月。これも忘れない!
ダダルズのサル余談。初日は終盤ゲリラ雷雨に見舞われ終演後がそのピークに。
劇場ビルの入口で観客間で今後の雨足や最寄りコンビニを共有したりしつつ少しの間を過ごした。演劇の圧倒と雷雨の圧倒が少しシンクロする様な時間だった。
自分より先に雷雨の中を走り抜ける人の背に大石さんを重ねたりした。