破壊された女 公演情報 破壊された女」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    お布団は昨年7月漸く初観劇してまだ二度目ながら、期待値は勝手に上昇。一人芝居という事で難解さもある程度覚悟して観劇に臨んだが、その覚悟を上回り、汲み取れずに見終えてしまった。
    台本を買い、半分を割とすぐ、残りを一週間後に読む。やはり厳しいものがあった。台本から若干端折った部分があったのかどうなのか・・中盤に差し掛かったあたりで台本では台詞を断ち切るように「暴力が発動」、「身体が倒れる。立ち上がる。」と指定するト書きが頻出する。これ、やっていたか、別の動作で代替していたか、も忘れた。途中瞑想の時間が生じてたのやも。ほぼ全編、客席に向かって俳優は語る。例外は、三部構成の二部で「女」が働く現場の描写が(これも語りの台詞を断ち切るように)頻繁に差し挟まれる。「先にお席の確認からお願いします」(カフェでの接客)、その職場を出て、次はコンビニ「いらっしゃいませ」「申し訳ありません。トイレの貸出しは行なっておりません。」・・ここではカスハラ客のネチネチと怒って来るその客の台詞も言う。(このやり取りは「語り」の内容のヘビーさと相まってかなり消耗する。)

    第一部は「彼女」の物語。「絶望」や「悪」という、「彼女」が帯びる属性について語られる。他者の物や、人との関係、希望や生き甲斐を「奪う」技に長け、そこにしか「生きる実感」を感じる事がないことを自覚し、それを実践する。
    この内面描写的な始まりから、少し進むと叙事詩的展開となる。「彼女」はやがてカリスマ的存在としてカルトの教祖のようになり、「現実を生きづらい人たち」の帰依の対象となる。使徒を引き連れた彼女は「悪」の実践の果てに地上を破壊するが、正義の勇者によって殺される。さらに話は神話的となる。彼女は復活し、再び悪を為す。そして二度殺された後は、彼女という存在がアイテムとして流通し、象徴となり、果てはゲームキャラとなり、消費され尽くす。絞り取られた「彼女」のエキスは枯れた挙げ句ついに完全に消えてしまう。これが第一部。
    「彼女」について語った「女」は、さてこれからどう生きるかと現実に立たされている。第二部には現代の風景がある。コンビニやカフェで働く接客場面の台詞、そしてチック症状のような動作が、「語り」の台詞を絶えず中断させる。動作は単純作業(例えばコンビニでの仕事)を手が習慣的に覚えていて勝手にしようとし、それを止める、といったもの。語りはいつしか「女」にとっての「彼女」、を語る「私」の語りになっている。女の内面にある「彼女」の残滓についての言葉は、人は何によって立つか、生の根拠、力の源、といった要素について語っているようで。
    そして第三部はどうやら、既存のそれも含めた「神」と、人間の関係を語っているようだ。結語のあたりで、「神は死んだ」という言い尽くされた事実が、もちろん別表現でではあるが据えられ、語りは終わる。この部分が私には、結局着地できなかった思考の経過を見せられたような余韻を残した。舞台を観ての「わからなさ」の理由は、思考が辿る旅が終着点に来たと感じられない自分にあった、のかも。

    現代人の存在のあやふやさを、神的な要素をメスとして切り開き語ろうとした試み、それ自体は大変応援をしたくなる内容ではあった。
    テキストは現代の生にまとわりつく精神的な「生きること」を巡る困難を想起させる。物語としては成立した(書き切れた)とは言えず、スッキリもしないが、問題の球をガンガンと投げている。

  • 実演鑑賞

    俳優による一人芝居のWキャスト公演。出演俳優によって観客の印象が結構変わる作品では…と思います。残念ながら僕はA公演のみ観劇。初演は2019年で5年ぶりの再演、とのこと。

    一人の「女」が、見聞きしたこと、体験したこと、自身のこと、頭の中に流れる感情、などを交えて語る、「現在の社会」と「破壊」について。空気感は徹底的にドライ、そして、虚無と絶望に溢れている。ブラックボックスのコンパクトな空間で、俳優一人、映像、照明というシンプルな構成。そこに圧縮されていたのは、今日の日本が抱える「停滞」だと感じた。

    ネタバレBOX

    まず、空気感がとても好きです。虚無、そして絶望。真面目に、全うに生きていたらこうなりますよ…という、社会に対する諦念。個人的見解も含むが、現代日本人として共感できる空気が場内にあった。このドライな視点、社会や作品の見つめ方が、いかにも演出家っぽいし、得地弘基さんらしいテキストだと思う。その上で、社会や現代に関する怒りの感情が、爆発するでもなく、他者に差し水されるでもなく、自分の中で暴発するでもなく、ひたすら自然鎮火に近い形で消えていく様が、とてもはかなく、複数の感情が心に浮かんだ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/05/27 (月) 14:00

    女優の一人語りによる「或る女」の顛末。そうして語られるのはいかにも「イマの世界」。5年前の初演時に昨今の情勢(?)をここまで言い当てるとは「予言の書」か?(驚)
    また、時々あった語りの合間に日常的な受け答えの台詞が差し挟まれるのを面白いと思っていたが、アフタートークで作・演出の得地弘基氏から「種明かし」があって大いに納得。

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