短編作品集『3℃の飯より君が好き』 公演情報 短編作品集『3℃の飯より君が好き』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.6
1-10件 / 10件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    Aチームを鑑賞。
    2作品とも面白く観ることが出来た。ただ,短編2本という構成からやむを得ないのかもしれないが,観劇後に残るものが薄くなってしまったのでは。もちろん,表題作はただ観ていてもそのドタバタは面白いし,深読みすれば更に面白みもあったのだが,印象さんの芝居は,前々回のチャペックが初めてで,その影響もあるのかもしれないが,もう一つ何かと思ってしまったことも否めない。もしかしたら,Bチームも観ておけばその対比から面白さが増したのかもしれないが…

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    Aチーム観劇。2本立ての短編集。一本目の朗読劇は今風の中学生日記か。何か懐かしい感じですね。二本目は温度差のある夫婦の再生物語。シュールだけど、リアルに響きますね。ああ、身につまされます。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「メイクアップ」は、ある公共劇場の企画で「子供に伝えたいこと/子供と考えたいこと」というテーマで30分の戯曲として応募したものらしい。この作品はベタな青春ドラマ、ショートムービーといった印象で、朗読劇としては 脳内にしっかり映像化が出来た。その意味で分かり易い作品だ。

    「3℃の飯より君が好き」は、夫婦の会話劇であるが、人と社会の夫々の距離感というか関係性、その表し難い内容を舞台を通して描いており面白い。
    どちらの作品も照明技術が巧く、眼前で演技している役者の姿、その人影を壁に映し出し、人物の多面的な捉え方を観せているよう。
    (上演時間1時間30分 休憩なし)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、後景に水玉模様のある紗幕、下手にソファ、横並びに椅子が3脚。
    〇「メイクアップ」
    基本 椅子に座っての朗読。登場人物は中学3年生の女子生徒2名、男子生徒1名。女子生徒は小学生時代にスイミングスクールで知り合い、中学生になり安藤理沙は演劇部へ、山﨑陽子はどこにも入部せず、スイミングを続けている。男子の岡田保は演劇部。最近クラスの女子の間で化粧をする子が…陽子曰く、化粧は男への媚る といった男尊的な感情だという。それに批判的な意味合いも込めて、2人は化粧をしない約束をする。

    演劇部の卒業公演で「オセロー」を上演するため、理沙(デズデモーナ役)は舞台化粧をしたいが、陽子は化粧を認めない。約束を破るのか、裏切るのかといった激高。また、保はオセローを演じるにあたって、リアリティを高めるため ブラックフェイスを考えている。このことを陽子が匿名Xで呟き、人種差別とバッシングされ 公演が危うく…。
    それにしても12月のプールはベタだなぁ

    「メイクアップ」を通して誰のための 何のための化粧か?男女の性差に潜む男女差別、一方演劇「オセロー」を通して、表層的には人種差別。両方に、差別意識・裏切りという共通の言葉が浮かぶ。「オセロー」で黒人 将軍オセローの部下 イアーゴーが、正直者に見せかけているが実は悪党だと言い、「私は私ではない」といった台詞があったと思う。このような論理矛盾が成立する世界観では、真実や正義は1つではない。物事の見方・捉え方は一律ではなく、視点を変えれば違って見えるのではないか、そんな示唆に富むもの。
    まさしく子供と考えるに相応しい内容だろう。

    〇「3℃の飯より君が好き」
    休憩なしで素早く場面転換。舞台美術は、メイクアップで使用した椅子を搬出し、代わりに下手にテーブルと椅子を置く。
    或る一夜の夫婦の奇妙な出来事を通して、改めて愛情(個人)そして生活(社会)との関わり、そんなありふれた幸せを描いた作品。

    妻が仕事から帰り、夫が夜勤の仕事に出掛ける迄の 小一時間の物語。
    洗濯ものを片付け、食事(1年近く前に作り、冷凍していたカレー)といった ありふれた光景。暗転後、突然 妻のお腹が妊婦のように大きくなり、夫の股間は凍り脹らむ。冷たい身体、これは2人の関係性の比喩であろうか。何とか温めて溶かしたい。

    結婚して2年経ち、この地へ来て もうすぐ3年が経とうとしていた。妻が言う、新婚っていつまでなの。新婚旅行にも行っていない。夫はいつかと言うが、具体的ではない。カレーは今の冷めた?夫婦関係ー仕事をし家事もテキパキする 今を大事にする妻、一方 売れない詩作、物事を先送りする夫ー。そこへお腹と股間の膨らみは、何らかの啓示か?夫は子を望み、妻はまだ早いという意識の違い。同時に、地域との繋がり(祭りへの参加)を考えている夫、距離を置きたい妻、しかし移住して家賃補助を得ている現実。

    ありふれた日常の中に、夫婦の関係や地域との関係、それを冷凍から解凍していくような温かく優しい気持にさせる不思議な物語。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     Aチームを拝見。2作を上演するが、第1部はリーディング公演、第2部が通常の演劇公演である。板上には、2部で用いられる舞台道具も大きな物は予め置かれているが、リーディングで用いられるのは木製の椅子3脚のみなので他の道具は目立たぬように照明で加減している。興味深いのはリーディングでは実験的に効果音迄台詞化されて上演される点だ。第2部6.10 0時20分アップ

    ネタバレBOX

    登場人物は3名、全員中学3年生、15歳。理沙と陽子は小学校時代スイミングスクールで隣り合ったレーンで泳いでいる際、タイムトライアルでのライバルとして意気投合、親友になった。陽子は中学に入ってもスィミングスクール通いを続けているが、理沙は演劇部に入りスィミングスクールは止めてしまった。もう1人の登場人物は矢張り演劇部の保。
     ところで中三になってクラスメイトの中には眉毛を抜いたり、マニュキュアをしたりと化粧を始める者も何人か出てきた。これらの女子は男子に人気があり、どことなく大人っぽい。これに反感を覚えた陽子は男に媚びる価値観が化粧させるのだと反発し理沙と化粧をしない約束をしていたが、演劇部では「オセロー」を演じることとなり保がオセロー役、理沙がデズデモーナ役と決まった。演劇上でのメイクが一般の化粧とは異なるのではないか? と例外規定として約束違反を認めて貰いたかった理沙は陽子の頑なな態度に遭い絶交してしまう。陽子は陽子で演劇の世界に入って自分の分からない言葉や概念を用い話す理沙との齟齬に対するに、二人とも未だ自らの社会的責任を負うことの意味すら知らぬまま化粧しないという約束をしたことを根拠にストイシズムで対抗する。そして演劇部部室に忍び込んだ際偶然耳にした、保がドーランを顔に塗って演じたいという話を盗み聞き、SNSでブラックフェイスが差別語であるとして炎上させた。この件は、職員室でも問題化されたから卒業記念公演「オセロー」も潰されかねない事態に発展する可能性さえ出てきたのである。ここは演劇サイトであるから「オセロー」観劇経験は無くともシナリオは読んでいて当たり前。裏切りと嘘、偽情報散布が、「オセロー」と交錯している点は誰でも気付く。従って今作は「オセロー」の最も重要なテーマの一つである裏切り、嘘(本当に見えがちな嘘、或いは本当と誤解されがちな虚々実々情報)、或いは様々な見解があるにも関わらず見解は唯一つであるかのようにSNSという検証不完全な媒体に載せて拡散することで歪みを作り出す過程を炙り出す。無論、ブラックフェイスは19世紀英米で隆盛を誇った数多くの役者らによって世界中に広まり、差別問題として取り上げられるようになってからも暫くは用いられたメイクであったが、異論もあり、保の見解もまた差別では無く、人種差別社会で実力だけでトップにのし上がったオセローに対するリスペクトからブラックファイス採用を検討していた。陽子が自分の為したことを保に告白し彼女の行為は露見することとなったが、その解決策があっけらかんとしていて15歳を現すのに相応しい。
     効果音を総て台詞で表現している実験が効果的だとは思わないが、少し深読みすればこれも15歳のストイシズムを、演劇としても演出でサポートしていると観れば極めて面白い実験であり、更に作品を深いものにしているということができる。問われているのは、我々観客の受け取り方の深さと広がりではあるまいか?

    第2部はフライヤーでも採用されているタイトルの作品だ。
     今作で最も問題となるのが、このカップルが互いの生殖に関わる器官に抱えることになった氷が何のメタファーなのか? ということであろう。作中、男の目指すもの・ことは頑是ない子供の悪戯書きのような詩を書くこと。一方女は日常的には実生活を重んじるものの、男の夢に賭けることで接点を作り出しファンタジーのような結実を見せる点がグーだ。
     因みに後片付けができない男と夫婦になって2年の二人は新婚旅行にも行っていない。男はソファーに寝そべり洗濯物は取り込んであるものの畳んではいない状態だ。夜勤仕事に出掛ける前に1時間ほどある。そこへ妻が仕事から帰宅。夫が相変わらず部屋を散らかしているのを見て呆れつつも洗濯物を畳むのを手伝う。夫は出掛ける前に食事をする積りである。メニュは夫の誕生日に妻が作ったカレーを解凍して食べようとするが、妻は経年劣化で味が落ちていると反対、中々意見が纏まらない。そんな中の雑談に新婚旅行に行っていない話も出てくるのだがそれらの雑談中、夫が冷凍庫から出したカレーで食事の準備をしに電子レンジのあるキッチンに行っている間に妻の体に異変が起きた。何と臨月を迎えた妊婦の如くお腹が膨らんでしまったのである。而もそのお腹は氷のように冷たい。重さを尋ねると3㎏くらいとの答え。あれこれ対応を考えるがどれも上手く行かない。そうこうしている内に、夫の性器もコチンコチンに冷え固まってしまった。二人は途方に暮れあれこれ考えるも解は無い。仕方なくレンジで温め直したカレーを食べると、二人共同時に氷が溶け始めるのを感じ、実際に氷は溶け去って元の体に戻った。二人は共に手を取り合い舞う。その様は丁度始原の海に初めて出現した命のように、幻想の海に漂い、波と戯れ翻って風と遊び再び海に溶けるかと思われる。このように比喩的で詩的な作品である。解釈は様々だ。自分の解釈は以下の通り。
    演劇は、小説よりずっと詩に近い。小説は煉瓦を一つ一つ積み上げて完成に近づける作品群であるが、詩はいきなり本質を手掴みにし言葉の髄で固定する。作中、男の目指す詩は頑是ない子供が落書きしたような詩を理想としていることが語られるが、その意味する処は総てのバイアスを排除し虚心坦懐にもの・ことを観察しそれを真っ直ぐに表現するということだろう。言うは易く行うは難い芸術論である。然し乍ら、妻も夫の理念に共感はしている。掛かるが故に二人は支え合い偕老同穴の契りを結んでいるのであり、掛かるが故に始原の生命体のようなファンタスティックダンスを共に踊ることが出来るのである。タイトルに3℃が入って水の極めて珍しい性質の一つ、約4℃でその密度が最大になることと大いに関係している。何故なら彼らの恋の密度は3℃の水がその比率の多くを占める飯より妻を愛していることになるからであり、二人の体の異常が食物を摂ることによって解消され問題だらけの未来(氷)から問題の氷解した新たな未来へと転化したからである。換言すれば自分の解釈では、氷が表して居たのは未来(問題だらけの)であり夫婦は新たな未来へ旅立った訳だ。これを寿がずして何を寿ごう。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2024/06/07 (金) 19:00

    Bチームを観劇
    メイクアップ!⇒三℃のの順
    合計90分。
    パペットを使った演出で、当初はr-ディング公園と宣伝されていたがパペット演劇に。
    Aチームは未見。
    二人の女優さんはパペットの可愛らしさもあって役柄相当の年齢に見えた。三つ編み姿の #横室彩紀 さんはまんま中学生。前作前々作では高校生役、その前は幼子役、最近作の短編映画のシド・ヴィシャスの花嫁では20代半ばと30代を演じていて、恐るべし適応力。
    3℃の飯より君が好き、は移住した若夫婦の一夜の話。スレ違いがありながらもお互いを大切に思う感じが良く出ていたと思う。

  • 実演鑑賞

    面白かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    演出・一宮周平【Bチーム】

    ①『メイクアップ!』
    役者の首から小さなパペットの身体をぶら下げる人形劇スタイル。このセンスは悪くない。配役の狙いが良い。横室彩紀(あき)さんは流石。

    ②『3℃の飯より君が好き』
    10ヶ月ほど前に妻(尾崎京香さん)が作ったトマトカレー。冷凍保存しておいたそれを解凍して食べようとする夫(花戸祐介氏)。「何で取っておくのか?何故その時すぐに食べないのか?」と考える妻。“今”を冷凍保存しておきたい人間の心理。全ての“今”はあやふやな感情の風の中に舞っている。確かなものを残したがる気持ち。その時、妻の子宮は凍る。

    『海月になりたい』という歌が凄く良い。雪の降り出した海辺の町で、どうしようもなく壊れかけた二人が“今”を手に入れるラスト。

    ネタバレBOX

    もし観るならばBチームがお薦め。鈴木アツト演出はサービスが足りない。余りにも中途半端。

    30人程の客。助成金が出ないと成り立たない演劇。その歪さから目を背けるのは自称文化人達か。

    ①Twitterで叩かれた翌日、泣き出した新行内(しんぎょううち)啓太氏が教室を飛び出すシーンから無理がある。追い掛けた中坂弥樹(みき)さんの弁明、その辺りも嘘臭い。イエロー・フェイスの差別意識では落ちない。本気で差別と向き合いたいなら幾らでも方法はあっただろう。何か適当に問題意識を振り撒いただけで薄っぺらい。痛みと暴力が足りない。実際に黒塗りオセローを演ってみせるべきだった。

    ②凍りつくネタが不要。もっと違う形に置き換えるべき。ずっと自分の中の氷を溶かす為に詩を書き殴ってきた夫。最早それでは溶かせそうにないと思う。夫婦が“家族”を続ける為に何が必要なのか?何が不必要なのか?
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    短編2編でどちらも深刻な重いものではなかった。最初から最後までちゃんと観られたし、話の内容もわかった。
    すごく満足か?人に勧めたいか?と言われると…
    2編のテイスト、対象年齢、テーマなどがあまりにも違う。揃えなくてもいいと思うが、ある程度の納得性が見終わった後に観客に残ると良かったのでは?

  • 実演鑑賞

    昨年「犬と独裁者」という面白い作品を下北沢の小劇場で上演した劇団の公演なので、はじめての北区の公共劇場へ出かけた。
    舞台の方は試演会みたいなもので、短編に作。1時間半ほどの公演だったが、中身以外に感じることも多い公演だった。
    まず。印象という劇団はもう二十年もやっているそうで、昨年の世界劇作家裏面史は、あまり知られていない作者(ソ連のブルガーノフ。(近かじかどこかで作品上演があるというチラシを見た)の公私の生活をない交ぜにしていて、シバイになっていた。今回も期待して観にいったのである。しかし、上演は過去の作品も改変も含めて短編二本。全くつまらない、と言うわけではないが、俳優もプロではないだろう。ことに前半の半ば朗読会のような上演で初化粧する女子中学生のドラマは、高校演劇コンクールならともかく、一般公開で観客に見せるには、ブルガーノフ以上に客を狭めてしまう。そこが解っているのか?
    タイトルになっている「三℃の飯より君が好き」は同棲男女二人の某日スケッチ。今の女性優勢、少子化時代の若者風俗が面白かったが、シバイ作りに無理がある。ことに氷の妊娠、勃起のくだりは前後と異質のファンタジーなのだが、出入りに全く工夫がしていない(アイデアとしてはこの場面白いところだが)ので、はぐらかされてしまう。前後のリアルに裏打ちされたところは結構うまく出来ているのに、多分、それだけだと横山もどきの掌編になってしまうと、入れたのだろうが、練りが横山に比べると、全然足りない。
    公演を北とぴあという北区の地域文化センターのような場所の15階の一室で公演していて、チラシによるとこの区にも文化事業支援があって、この公演にも助成金が出ている。それでこの公演か、と納得した。しかし60席くらいのスペースで7割くらいの、主に義理の客らしい客相手にこういう公演をやることが区役所の文化行政としてどうなのか、演劇をどう考えているのか(児童向け公演など開発しているようではあるが)聞いてみたいところである。その安易な取組みが如実に表れたのが、このホールである。ホールと言うにはあまりにも便宜的な、稽古場といった場所で、天井は低く、舞台は平土間のママ、照明バトンは頭上に迫り、照明は漏れ放題、場内音声の処理のしようもない、
    試演会ならこれで良い。しかし、普通の小劇場劇団の中の上の料金を取って興行としてみせるには、区役所も劇団も少し考えた方が良い。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    演出・鈴木アツト【Aチーム】

    ①『メイクアップ!』
    児童青少年演劇の企画の為に作られた30分のリーディングもの。
    中3の少女二人と少年一人の青春模様。化粧は男尊社会への隷従だとガチガチのフェミニストの村田詩織さん。長い付き合いで親友の佐藤美輝さんは演劇部でヒロインを勝ち取り、メイクしたくて堪らない。その『オセロー』主演の河野賢治氏はより作品のテーマを深める為、あることを決めた。

    ②『3℃の飯より君が好き』
    新婚夫婦。仕事から帰って来た滝沢花野さん、これから夜勤の交通警備に向かう向井康起氏。滝沢さんの腹が突然膨れて中に氷の塊が入っているようだ。

    ネタバレBOX

    ①子供向けなんだろうが、子供にもキツイと思う。もう少し深く突き刺さる問題提起をしないと。

    ②純文学なんだろう。凍ってしまうということの暗喩なり何なり。ラストのぐるぐる回りながら二人手を繋ぎ、歌い続ける奇妙な舞踏。演劇で純文学をやるとこうなるのか。

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