杏仁豆腐のココロ 公演情報 杏仁豆腐のココロ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-2件 / 2件中
  • 満足度★★★★

    観てきました!
    やはり頑張って観に行って良かった。

  • 満足度★★★★★

    <桑原勝行×もりちえ版>相手を想う気持ちに、胸が締め付けられる
    鄭義信さんの素晴らしい戯曲を2人芝居で。
    男女の互いを想う気持ちを、細やかに見せてくれる。
    胸が締め付けられるような舞台。

    ネタバレBOX

    クリスマスイブの夜。
    女の親がやっていた、ちんどん屋を廃業し、引っ越す男女2人。
    そして、その2人はその引っ越しとともに別れることを決めていた。

    男は、女の希望した鍋焼きうどんではなく、おでんをコンビニで買ってきた。2人は、おでんを食べ、酒も呑みながらなんとなく会話をしていく。
    男は、「クリスマスの夜に、ケーキは当たり前すぎるから」と杏仁豆腐をデザートに買ってきていた。

    クリスマスイブから、クリスマスまでの1時間20分、別れていく2人の男女の物語。

    前半は、女の母親のエピソードが挟まれる。
    そして、男の登場によって、その空気が変わる。
    それも、ガラリではなく、ゆったりと変化していく。

    中盤以降、その空気が激しく振動し、2人の行方を見せていく。

    この物語には、その裏面に『櫻の園』がしっかりと縫い込まれているというのが、凄いと思う。
    女があこがれていた女優の、ひとつの象徴的なモノとして『桜の園』がある。今住んでいる家の庭には桜が咲いていたという設定や、女が読み上げる台詞の1つひとつが効いてくる。それは、ちょっとあざといかもしれないのだが、いい効果であることは間違いない。

    鄭義信さんの戯曲が素晴らしいこともあるのだが、それを、その世界を見事に舞台の上に見せていた。
    その力量は、確かなものだと思う。

    気持ちの抑え方、上げ方が実に見事だし、2人の会話が、まさに長い間一緒に過ごした者たち、なのである。
    お互いの間隔と互いを意識する感覚が、自然なのだ。
    そして、単に自然だけなのではなく、そこに孕むお互いへの「想い」が、後半に行くに従い、流れて出ていく。その様と過程がいい。

    そして、何より、例えば、おでんを食べるときに、1つのネタを分けて食べるという仕草がいいのだ。会話をしながら、割って自分の皿に置いたり、かじって相手の皿に置いたりとか。また、例えば、こたつの入り方の、そのタイミングや、どこまで身体を入れるのか、こたつ布団の上げ方とか。さらに、例えば、熱燗の持って来かたとか、その扱い方とか。

    特に「アレはどこだっけ?」という問い掛けに対して、すぐに反応する様子なんかは、涙モノだった。

    そんな普段の「生活」が滲み出てくる演技が素晴らしい。

    今回外部の演出家(三浦祐介さん)によるのだが、そのニュアンスの付け方ということもあるのだろう。いつものエネルギー溢れる桟敷童子とは違った一面を見せてくれた。
    また、そのニュアンスを見事に体現した2人の役者も凄いということなのだ。
    そうした細やかな芝居に、泣けてくるのだ。

    2人の登場人物の優しさが滲み出てくるのが、とても切ないし。

    今回、女優のトリプルキャストであり、桑原勝行さんと、もりちえさんの2人の芝居を観たのだが、この2人の息の合い方は、本当に良かった。
    もりちえさんは、もりちえさんの「女」を演じたわけだから、別の回では、別の2人の女優の、別の「女」がいるわけでだ。
    つまり、同じ戯曲でありながら、別の女と生活した「男」を演じる桑原勝行さんの実力が試される公演ということだ。
    今回、もりちえさん版を観て、この素晴らしさだったということは、他の2バージョンも同様に素晴らしいということだろう。
    観られなくて残念だ。
    いつもこうしたダブルキャストやトリプルキャストで思うのだが、1週間ごととかに日程を開けてくれたらなあ、と思うのは観客のワガママか。

    もりちえさんというと、いつも姉御みたいな役が多いような気がするのだが、今回ひょっとしたら、初めて、カワイイ、そして切ない女を演じたのを観たのかもしれない。
    やっぱり上手い人だから、そういう役を演じてもいいのだ、ということに気がついた。
    桑原勝行さんの、優しさと、その内面の表現も良かった。

    そして、ラストへの展開で、「杏仁豆腐」という、クリスマスの夜にはふさわしくないデザートが、ケーキでクリスマスを祝えない、2人の哀しい出来事を、実は見せていたことに気がつき(2人のやり取りで)、また涙してしまう舞台であった。

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