将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~ 公演情報 将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2024/04/10 (水) 19:00

    この団体の公演は一昨年1月の江戸川崇(カラスカ)作・演出による「東京卍メロス」を観ただけであるが、今回の公演は黒薔薇少女地獄の太田守信が作・演出。
    タイトルの「将棋無双・第30番」からこのシリーズ30作目かとも思えるが、「将棋無双」は七世名人三代伊藤宗看による詰将棋100番を纏め江戸幕府に献上された作品集のことであり、これらの詰将棋はなかなかその解答本が見つからなかったため、「詰むや詰まざるや」と言われたそうだが、中でも第30番は神局と称されているという。従ってその神局という第30番をモチーフにした物語ということだろう。

    上野ストアハウスのさして広くもないロビーに入って、出演者の写真やトレーディングカードを購入するために、中高年の男たちが列をなしているのを見てイヤ~な気になった。若いカワイイ女優を集めてその物販で儲けようとする公演では、その内容の薄さに散々失望させられているからだ。その最たるものは高取英晩年期の月蝕歌劇団だ。

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    舞台奥には教会のような十字架をモチーフとした巨大なステンドグラス、そこに開場時からパイプオルガンが響き渡り、ゴシックロマンに溢れたムードが漂う。

    が、冒頭で「ねえねえ、おばあちゃん。今日もお話を聞かせて。おばあちゃんの若い頃のお話」と子供たちがお話をねだる祖母がメイクも声も若いままであり、ここで「ええ~ッ」となってしまう。要するにかわいいままの姿を見せることで、ファンを満足させようとの浅はかな目論見なのだろう。

    そもそも、まだ世界が一枚の、9×9=81マスの盤面だと信じられていた時代って、どんな世界なんだよ。
    その世界で神に背き仇を為す存在・吸血鬼との戦いが繰り広げられ、それは舞台床面に設置された巨大な将棋盤の上で登場人物たちが自身の駒を置いて詰将棋と重ね合わせられるのだが、これがよくわからない。
    駒の動きにも何らかの意味を持たせているのだろうが、もともと「詰むや詰まざるや」と言われた第30番が基なのだから、将棋がわからない者には尚更のこと難解でしかない。ラビット番長が上演している将棋シリーズとは大違いだ。

    これなら無理に将棋を持ち込まなくとも、人間対ヴァンパイアの戦いをゴシックロマンで彩って物語にした方がどんなにか良かったろう。奇を衒いすぎ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「将棋無双・第30番」

    昨年観劇した前作「将棋図巧・煙詰」で、真田林佳さん演じる伊藤看寿のセリフ「わが兄 伊藤宗看の将棋無双だって・・・」というのがあって、気になっていました。そして今回はその「将棋無双・第30番」。待ってました。

    自分は昔いろいろ調べたことがあって、詰将棋の作問ルールやその難しさについては詳しい方だと思います。セリフに出てくる「不完全作」の意味も分かります。よくあるのが「余詰」と呼ばれるもので、別解があるものは不完全とされます。

    完全作かどうかは作問ルールの範囲ですが、それを満たすだけでもけっこう大変なのです。しかも詰将棋はそれだけではなく、「問題として面白いかどうか」が重視されます。言い換えれば芸術的な価値です。

    この「将棋無双・第30番」は手順を予習して臨みました。詰将棋としてすごい作品ですね。詰め上がり=最終形が「曲詰」と言われる、意味のある形になるものです。なんでも「神局」と言われているとか。これが江戸時代に作られたというのが驚きです。

    ネタバレBOX

    以前観劇した「煙詰」では伊藤看寿として出演されていた真田林佳さん。今回は5一の桂馬としての出演。看寿のときと同様の迫力あるお声は期待どおりでした。
    そのペアとなる5三の成桂の中井杏奈さんとはまったく違う雰囲気なのが良かったと思いました。ペアを似たようなキャラで表現する舞台がけっこうあるのですが、遠目だとどっちがどっちか分からなくなってしまうので、はっきり違いがあるほうが好きです。
    その桂馬と成桂は最初から最後まで動かないので話にどう絡むのか想像できませんでしたが、いろんな意味で絡んでました。

    前作の煙詰ではギャグシーンは無かったのですが今回はテイストが変わって、遠慮なく笑ってよいシーンがたくさんありました。
    前作にも出演された政田圭敬さんの「と金の精」にはびっくりしました。大笑いでした。
    馬鋸でどう時間を使うかに注目していたところ、総動員でスピードアップして、これまた大笑いでした。
    金将の出番が終わるシーン、まさか玉将が食べてしまうとは。飛び散る血の花が鮮やかでした。
    何度も出てくる「反逆の逆十字」という言葉が詰め上がりを指していることは分かってましたが、最後に反転させるとは。その手がありましたか。

    詰将棋を知らない人がどれだけ楽しめたかは分かりませんが、少なくとも、楽しめるように工夫されていたと思います。是非シリーズ化して欲しいです。

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