東京物語 公演情報 東京物語」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第一幕60分休憩25分第二幕80分。
    2012年1月初演、2013年7月再演。
    山田洋次92歳!二代目水谷八重子84歳!
    皆高齢だからコンパクトにまとめるだろうと勝手に思っていたが、ガチガチの作風。夢の世界の住人である監督やら役者やらは老いることを知らない。皆もう一度全盛期が訪れるのではないかと思う程のエネルギー!
    2013年11月、新橋演舞場で公演した中村勘九郎、今井翼、檀れい主演の『さらば八月の大地』。幻の満映を舞台に狂おしき映画への情熱を描き、小津安二郎愛に溢れていた山田洋次。(あの時の檀れいさんの美しさは未だに筆舌に尽くし難い)。
    オリジナルの『東京物語』は小津安二郎52歳、笠智衆49歳、東山千栄子62歳、原節子32歳の陣容。大体日本映画オールタイム・ベストをやると『東京物語』、『七人の侍』、『浮雲』と相場は決まっている。この全人類共有の無常観をどう調理するのかとくと拝見。

    ある意味主人公の石原舞子さん(長男の嫁役)が素晴らしかった。三雲孝江を思わせる上品な町医者の奥さん。拘りの舞台美術を背にしたその所作で作品世界を肌感覚で観客に提示。幕が上がると時代も空間も飛び越えて昭和28年の居間に放り込まれる。

    話は至ってシンプル。戦争の傷痕もかなり復興し、広島の尾道から年老いた夫婦(田口守氏と水谷八重子さん)が息子夫婦(丹羽貞仁氏と石原舞子さん)のもとを訪ねて上京。特に要件などなかったが、忙しい子供達は厄介に感じて余り相手をしてやれない。夫婦の感じる疎外感。

    美容院を経営している長女役、波乃久里子さんがまた巧い。オリジナルでは杉村春子の演じた役を田中眞紀子っぽさもある女傑風に盛り上げてくれた。旦那役の児玉真二氏も最高。
    戦死した次男を愛し続けてくれるヒロイン瀬戸摩純(ますみ)さんも見事。
    長男の医者、丹羽貞仁氏がまた絶品。結局誰も何も悪くないことを的確に表現。誰も何も悪くない世界で感じるこの痛みの元は何なんだ?

    一番、『東京物語』で好きな台詞は「じゃ、しなくたっていいんだね、勉強しなくたっていいんだね。あ〜楽チンだ、あ〜呑気だね。」だったので子役二人の演技には大満足。山田洋次は分かってる。どうでもいいような子役の立ち居振る舞いこそが心臓部だってことを。
    赤星東吾君、平山正剛君にリスペクト。

    水谷八重子さんが瀬戸摩純さんの狭いアパートに泊めて貰って帰って来る。「東京に来て一番楽しかったわ。」と皆に笑顔で語る。このシーンは必見。受ける共演者も涙ぐむ程の名演。これこそ今作の肝。
    田口守氏は笠智衆よりも志村喬っぽい味付け。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    『東京物語』はいろんな特集上映や名画座のオールナイトに組み込まれる為、観たくもないのに散々観てきた。『丹下左膳余話 百萬両の壺』、『鴛鴦歌合戦』、『柳生武芸帳』(第一部だけ)、この辺は始まるともう憎しみすら覚えた。(共感してくれる人もいる筈)。『激殺! 邪道拳』とか『恐怖奇形人間』とか何周も廻って好きになったり嫌いになったり。

    ラストはやはり山田洋次のサービス精神。そこが小津との境目。小津作品の場合は何もかも失くなっていく、消え去って行く様を当たり前のように描く。山田洋次はそれじゃ物足りない。「今が一番幸せだよ。」と言わせる。評論家受けは悪いだろうが、山田洋次ファンとしては納得。褒められる為に作品を創っている訳じゃないんだ。
    欲を言えばもう一度、『男はつらいよ』を作って貰いたい。令和の今に全く通用しないのかも知れないが、山田洋次の笑いのセンスをぶつけて欲しい。今の時代に“寅さん”は輝けるのか?
    散々な天災や事故、周囲に降り注ぐ不意の死の訪れ。自分の無力さに誰もが打ちのめされる今こそ。

    ただ生きる 生きてやる
    地上で眠り目を覚ます
    エイトビート エイトビート
    エイトビート エイトビート

    ただ生きる 生きてやる
    呼吸をとめてなるものか
    エイトビート エイトビート
    エイトビート エイトビート

    ザ・クロマニヨンズ 『エイトビート』

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