満足度★★★★
物・空間との対話
様々な日常的な小道具や会場の空間とダンサーの身体との関係性を丁寧に掬い取り、静謐な表現にまとめあげられた、とても美しい作品でした。
スプーンを手や足の甲に置いた状態で動いたり、ビー玉の乗ったテーブルを落とさないように2人で運んだりと、人間の体が常に重力に対してバランスを取っていることを小道具を用いて顕在化していて、それが説明的なだけではなく、ユーモアや詩情を感じさせるムーブメントになっていました。ティッシュペーパーを掌に乗せて空気の抵抗とバランスを取りながら踊る姿が素敵でした。
中盤ではダンサー達が風船になったかの様な浮遊感のある動きがユーモラスで可愛かったです。
段になった床や奥まった部屋など明日館の特徴を活かした空間の使い方も良かったです。
去年の京都での初演を観た時もティッシュペーパーのダンスが印象に残ったものの、他の小道具に比べてティッシュペーパーだけがタイトルの静物画らしくなくて唐突な感じを受けたのですが、今回は果物(たしか初演では使われていなかったと思います)が床を転がり回るダンサーによって押し潰され、その汁を拭き取るシーンがあったことで唐突感が薄まっていたと思います。終演後に出演者に聞いたところ、果物を潰してしまったのはアクシデントで、本来はティッシュで床を拭くシーンもなかったそうです。しかし結果としてはスムーズな小道具の導入になっていて、演出としてとても良かったと思います。
後半の白井さんのソロとそれに続くユニゾンでのダンスはスタイリッシュで格好良かったのですが、いわゆるダンス的ムーブメントが少ない作品なのでガッチリ踊るシーンも入れてみましたという風に見えてしまい、全体の構成の中で異質に感じられたのが残念でした。