実演鑑賞
高城れにが主演。家出した主婦が迷い込んだ先の劇場では、ひとりの客のためにいつまでも演劇が行われていて……という不思議な話。SFともいえるような愉快な設定で、展開も楽しかった。単に面白いストーリーというだけでなく、脚本の三浦直之なりの真摯で丁寧な思考をセリフから聞くこともできたのだけど、物語の核心に触れそうなのでネタバレ欄へ……。
実演鑑賞
満足度★
反面教師の舞台である。大きくは三つ。
まず、本がだらしがない。この作家はメタシアター作りが得意の様だが、外枠もできていなければ、内枠もできていない。結婚生活に飽き足らない若い女性が、家出をして人里離れた山中の劇場(演劇)と出会う物語だが、ファンタジーなのか、青春後期モノなのか、色々取り揃えてやっているが、結局何をやっているのかさっぱりわからない。かつて新興都市の読書クラブという面白い設定の同じつくりの作品(ロマンチック・コメディ)があったから手慣れているのかもしれないが、これではメタにする意味も分からなければ、その効果もわけがわからい。同じ構造の」KERAの再演(スラップスチックス)もやっているが、こうしてみると、KERAの劇的構成力との間には天地ほどの違いが分かる。
二つ目。キャスティング。際立つ軸がない場合に、軸を作る努力がスタッフ全体にかけている。物語が頼りないうえに、観客がついていける主人公に魅力がない。周囲も一部の若者の人気だけでそろえているから、脇でまとめられる役者がいない。これでは2.5ディメンションと同じで、それならそうと、もっと腹をくくって、ロビーをグッズ専門売り場とサイン会場にするくらいの覚悟がなければ、これでは関係者すべてに不満が残ってしまうだろう。
三つ。パルコ劇場は、都市演劇の新しいジャンルを開拓してきた実績もあり、制作部もある劇場である。劇場改築のころから、梅コマのように複数のプロデュースも行ってきているが、制作の方向が見えていない。2.5は本腰を入れれば、独自の領域が開けるかもしれないのに、制作部に方向性と情熱が見えない。これで、9千円で三週間打って客が来ると思っているなら、本や役者を読める人がいないということである。まだ始まったばかりなのに、半分がやっとでは先が思いやられる。
興行には失敗はつきものであるが、ほかにも、パルコ主催でまず、初歩の基本的取り組みでちょっとどうかと思う舞台が続いたので憎まれ口。