実演鑑賞
満足度★★★
2回目。
堀部安兵衛の「高田馬場の決闘」の芝居で使われた、主人公は足踏みしたまま背景の人物達が動くことで移動を表現する演出効果。「自分達はこの場から動けないけれど想像力だけで何処までも行けるんだ」的な気持ちなんだろうな。
霧矢大夢(ひろむ)さんが最高に輝いている。こまつ座と元宝塚女優の相性はすこぶる良い。彼女を観ているだけで気分がいい。
実演鑑賞
満足度★★★★
2000年の初演、翌年の再演から22年ぶり。ソ連軍将校にいわれて、余興の台本作りに取り組む二人の劇作家(高橋和也、千葉哲也)…という設定はおぼろげに覚えているが、後は全然忘れていた。若い作曲家(西川大貴)とマドンナ(霧矢大夢)の破局を防ぐため、「ハゲを隠す坊主頭」「嘘を隠す大嘘」で、マドンナと元満州国役人の俳優(石橋徹郎)の衝撃シーンを芝居の中に組み込んでしまおうという大芝居。演劇の「キネマの天地」のように、演劇は人を救えるという思想を前面に押し出した演劇賛歌である。そこに、政府の満州引揚者を受け入れない棄民政策の告発をちょいときかせている。
後半、芝居の稽古の場面がみごとに笑わせる。石橋徹郎が長ーいロシア人の名前を云えずに口ごもったり、止むにやまれず選出家に泣きついたり、その困りぶりがコミカルかつ生々しくて爆笑に次ぐ爆笑。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/11/14 (火) 13:00
座席1階
時は終戦直後、日本の植民地だった中国・大連に取り残された日本人の物語。「きらめく星座」などのように戦火の足音が聞こえるような戯曲ではないが、背景には戦争があり、庶民を明るく描いた物語だ。22年ぶりの再演という。
連鎖街と呼ばれる繁華街のホテルで二人の劇作家が、占領軍ロシアの関係者の前で演じる30分の余興的な演劇の台本を書くように命じられているが、ほとんど筆は進まず、逃亡しようかと考えたりしている。どんな演劇をするのか、それぞれ新劇と大衆演劇の分野の二人だが、やっぱり気が進まないようだ。こんな設定から始まり、15分の休憩を挟んで3時間の上演。最後は人間関係の修復なども戯曲の中でやってしまうという流れで、一貫して明るく描かれている。
2幕は歌唱シーンも多く、ミュージカルを見ているようだ。そうなってくると、こまつ座初出演という宝塚月組トップスターだった霧矢大夢の実力発揮というところか。音楽はピアノ演奏だけで展開されるが、なかなかの腕前で感心してしまう。
実際は日本への引き揚げをめぐって暗い世の中だったと思うが、そんな中でもたくましく生きる庶民の姿が描かれるのは、ああ、やっぱり井上ひさしの戯曲だなあ、と安心感も抜群。