実演鑑賞
満足度★★★
そういえば『飛龍伝』は観たことがなかったので一応押さえておこうと思った。アイドル女優がよくやる演目のイメージ。内容はもろ、つかこうへい節。ブス馬鹿貧乏の浪花節。昔、志穂美悦子主演の『二代目はクリスチャン』を観た時、途中から凄く苦痛を感じた。つかこうへいの過剰なマゾヒスティック・ナルシシズムが不愉快で、わざと観客を馬鹿にしているようにも。凄く低レベルな新興宗教の信徒が受難の殉教者に酔っている様を延々見せつけられるような。
今作もいつものそんな話なのだが、警視庁第四機動隊隊長山崎一平役の岩田和浩氏にやられた。ルックスは宮迫博之似、迸るエネルギーが尋常じゃない。ちょっと驚いた。好きな種類の脚本ではないのに打ちのめされた。人間の二律背反する愛憎の顕現。必見。
『飛龍伝’90 殺戮の秋』は1990年初演、富田靖子、筧利夫、春田純一の布陣。
今作は月海舞由さん、岩田和浩氏、堀之内良太氏で臨む。
1968年春。香川県高松市から上京した田舎者の東大生、神林美智子、全共闘闘士の作戦参謀、桂木純一郎に恋をする。時代は安保反対闘争。更に組織のごたごたに巻き込まれた彼女は全共闘40万人を束ねる委員長に祭り上げられることに。度重なるデモ隊と機動隊の衝突は激化の一途を辿る。そんな中、警視庁第四機動隊、「鬼の四機」の指揮をとる隊長・山崎一平は美智子に惚れてしまう。それを知った桂木は機動隊の内部情報をスパイさせる為、美智子を山崎の自宅に送り込む。全ては11・26国会前での最終決戦の為に。
女一人でこの場を回した月海舞由さん、凄い人間力。
敗北後、銀行員に身を翻した村手龍太氏は作品の文鎮のように要所を締める。
副隊長・南野(なんの)真一郎氏は力皇と三中元克を足したようなインパクト。
ネズミ役の川合耀祐氏も良かった。
安保闘争を背景にした『ロミオとジュリエット』。
是非観に行って頂きたい。