夜への長い旅路 公演情報 夜への長い旅路」の観てきた!クチコミ一覧

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  • 実演鑑賞

    古典作品を鋭く豪奢に舞台化、という勝手なイメージが、初見の「悪霊」では狭い劇場(同じ風姿花伝だったか)に詰め込んだような泥臭い作りながら作品が秘めたメッセージを誠実に伝えていた印象(自分には思い入れのある作品でもあり)。些か気になったのがキャスティングにスターシステムの影が。
    その懸念が当たったかに思える今回の「夜への・・」。少々残念な結果であった。以前観た熊林宏高演出の優れた舞台が念頭にあったためだろうか。
    幾らか差引しつつ、こういう作りもあり?等と角度を変えて観ようとはしたが眠気もあり「脳」がうまく稼働せず。
    最後まで違和感を拭えずに終えた理由は、自分の中では一つ、やはり配役の問題だった。果して、作品優位で決めた配役なのだろうか・・?という疑念はこのユニットの製作態度に対する根本的な部分に向いている。

    ネタバレBOX

    改めてこのドラマの軸と気づかされた、母役を担った女優は元宝塚のベテランで退団後もコンスタントに活動をして来られたようなのだが、主としてミュージカル、朗読。最初母が語り出した時、若い女優が老け造りをして演じているのか、と思った。この役を演じるには経験も少なく若い女優を当てちゃって何かバーターで決まったものに違いない、とその時思ってしまった。
    蓋を開ければ[若い女優」では無かったが、神経病みが気まぐれに襲い(その遠因は確か父にあったか)、家族を翻弄し続ける役どころを担うには、凡そこの女優には引出しが無かったか、あるいは演出の誘導ミスか。いたいけな女性という一つの像だけを観客に提供する(その事でしか観劇が報われない)のでは、舞台は物語紹介だけの機能の終わってしまう。多面性を孕む人間存在への想像の旅を、提供する舞台でありたいのが私の願望。
    そのためには人間心理の内奥に触れる洞察力が、この役には必要であるが、確かにミュージカルに登場するキャラを演じるには適合しそうな演技のタイプであった。
    息子役たちも決して役を深掘りできていたとは思われない。母と息子が言葉をやり取りしても一体そこで何が起きているのか、その言葉の裏の心情、感情はどういったものか、見えてこない。(特に眠気のある体調ではテキメンなのである。)
    唯一魅せる場面は父役・長谷川初範が積年の思いを胸に、だろうか、珍しく長々と語る場面。「何が起こっているか」が霧が晴れるように現われ、初めて舞台上の事象に目の焦点が合った。
    どうも酷評になってしまったが、昨年は「わが友ヒットラー」が優秀な舞台として注目されたよう。今後も探求を続けて欲しい。

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