満足度★★★
個性豊かな3作
地方の劇場で滞在制作した3作の上演。それぞれ異なるテイストがはっきり出ていて、ビジュアル表現にこだわりのある作品でした。
村山華子『カレイなる家族の食卓』
繋がりが失われていく家族の様相をカレーライスとヤギをモチーフにしてユーモラスに描いていました。
映像や衣装、小道具がセンスが良くて可愛かったです。それぞれ2台のビデオカメラとプロジェクターを使ってリアルタイムで映される舞台上の様子が遠近法を用いることによって映像の中ではトリッキーな絵になるというアイディアが楽しかったです。
影絵劇のスクリーンに化ける大きな鍋や、リバーシブルになっている衣装など色々仕掛けが施され、動きもバレエ的な美しいものが多く、万人向けな作風でした。
前納依里子『CANARY -"S"の様相』
サイバーパンク的なアンダーグラウンド感が漂う雰囲気の中で、現代社会における人の欲望や孤立感が描かれていました。電子変調された声や物音で構成された音楽や、撒き散らかされる服や髪も衣装も真っ白のダンサーなど異様な迫力に圧倒されました。
冒頭シーンのスモーク量の少なさや、最後のシーンがあっさりと終わってしまったのが残念でしたが、ストイックな作風が良かったです。
上本竜平『終わりの予兆』
男性2人、女性2人が出演していましたが、男性はいわゆるダンス的な動きはせずに、ぶつぶつと呟いたり日用品を並べたりしていました。ドキュメンタリータッチな映像が流される中、舞台上ではそれと関係があるようでもあり、ないようでもあるパフォーマンスが繰り広げられ、不思議なリアリティがありました。
映像より先行して同じ台詞を話したり、舞台上の音響ブースの手前にスクリーンを置いて事前に撮られた映像を映したりと、時間のずれを感じさせる演出が面白かったです。
どの作品も構成・演出に趣向を凝らしたものでしたが、身体表現で強烈なものは感じられませんでした。美術や物語的要素なしで、ダンスのムーブメントだけでもっと魅せる作品になれば、見応えのあるものになると思いました。