実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/09/21 (木)
萬劇場にて劇団えのぐ『あんた、滅茶苦茶だよ!!』を観劇。
公演タイトルに必ず“色”に関する漢字が入っているという劇団えのぐさん。以前から気になっていた劇団の一つでしたが、これまでなかなかタイミングが合わず、今回初めて拝見させていただきました。
劇団のプロフィールを見ると、男女の2人の脚本・演出家がおり、奇数公演と偶数公演でそれぞれ分けて公演を打っているとのこと。第12回公演となった今回の偶数公演回は松下勇さんの作品でした。このローテーションというか、一つの法則のようなルールは面白いと思いますし、劇団の特徴・個性としてありだと思います。定時開演に拘っているという部分も概ね共感出来ます。
劇場に入ると、ステージ上に今回の使用劇場でもある“YOROZU”のロゴが刻まれた木材が露出。また、脚立なども剥き出しで置かれており、まるでセットを組み立てている途中、或いは解体している途中かのような空間が広がっており、ある意味斬新で不思議な感覚に陥りました。それもそのはずで、今回の作品は旗揚げ30周年を迎えるとある劇団の1週間前に起こる悲劇を描いたバックステージ物。スポットライトを浴びる役者さんだけでなく、原作者、脚本家、演出家、舞台監督、照明、音響、美術、衣装など、様々な裏方の役が登場し、非常に賑やかで、興味深い作品であったと感じました。恐らく今回の公演においても、多くの裏方さんがそれぞれの仕事を全うしているからこそ成り立っているものだと思います。
ただ、今回の作品はそのような各々の仕事を紹介しているものではなく、公演直前で台本を全部変えることになった。それも何回も。。。という、まさに誰もが「滅茶苦茶だよ!!」と叫びたくなるようなストーリー。ステージ上で繰り広げられるドタバタ劇はユニークで面白かったですし、どのような結末が待っているのだろうと楽しみもありました。
一方で、あまりにも声を張り上げているシーンが多いというか、大声で演じている役者さんが多く(ほぼ全員?)、観ていて若干ストレスを感じてしまったのも事実です。。声を張り上げたり大声を出すようなシーンは、場合によっては非常に重要な役目を果たすポイントになり得ると思うのですが、今回のように終始大声で演じている作品になると、ストーリー展開上、肝となるポイントが掴みにくく、耳が休まることもなく、途中から内容云々よりも耳障りの方が先行してしまったような印象を受けました。良くいえばエネルギッシュでパワフルなのかもしれませんが、シーンによる強弱もなくやや単調。今回が初見でしたので他作品も気になるところですが、これが劇団えのぐさんの作風や特徴であるとしたら、次の観劇は控えようかなとも思ってしまいました。終演後足早に劇場を後にしていた夫婦が「うるさかった」と感想を話していたように、好みが分かれる部分かもしれません。また、テンポが良く、よく稽古されている印象を受けましたが、シーンによってはもう少し間(流れに変化)があっても良いかと感じました。役に成り切っているというよりは、演じているという印象が残り、やや感情移入がし難い気もしました。途中であっと思わせる工夫・仕掛けが施されていた点は良かったです。