エコロジー庭国 公演情報 エコロジー庭国」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    真摯に問いかける問題作
    中国が消滅して大量に世界各国へ移住し、流入人口が増加。地球温暖化により北極が消滅し、海面が上昇。海洋に面した国々の人口過密問題が深刻になったという近未来の設定の日本。
    政府は国民方舟計画を前提に国民の要・不要の選別を決定。人口の増加によるフリーターの抑制を考え、アルバイト禁止法案を施行。
    それに関連して国内各地に「国民資格村」が政府主導で設置され、フリーターは村に送り込まれる。これはその村のひとつの生活を描いている。
    少子化が問題になる現況では、人口増加は考えにくいが、SF的ホラー、サスペンス、心理劇がミックスしたようなストーリーにひきこまれる。
    小規模のユニット公演ながら、真摯で、演劇でこそ表現できる問題作に挑んだ意欲を高く評価したい。

    ネタバレBOX

    国民資格村の在村期限は最長3年間。途中、試験を受け、成績がよければもっと早く村を出られるという。「いずれにせよ、3年たてば、自由になれる」ことを希望に、若者たちは食糧の乏しい村で、恋バナに花を咲かせたりしながら、比較的のんきに暮らしている。
    しかし、真相は3年以内に村を出られない者は能力が劣っているとみなされ、村を出ても国によって殺されるのであった。
    国民資格村の実態調査の名目で矢部(松村慎也)が人事異動の左遷によりニートという身分で村に潜入・派遣されてくる。
    最初は疎外されていたが、矢部もみんなと打ち解けていく。矢部は在日朝鮮人だという田中(河南由良)にだけ、真相を告げる。動揺する田中。田中の恋人だった鈴木も便りが来なくなって久しく、既に殺されたらしい。矢部も政府に再三、調査報告を送るのだが、返事が来ない。彼もまた、政府に切り捨てたらしいことを悟る。
    村の古参、佐々木(村山新)もまた、元調査員であったことを矢部と田中に告白する。佐々木の妻も既に亡くなっていた。絶対に真相を口外しないように佐々木は言い残し、3年の期間を終え、出て行く。
    「だれかに引き継がなければいけないから・・・」秘密を守りぬいた田中もまた、村を出る日、真相を仲間に託すことを決意する。
    河南の凛とした美しさに胸うたれる。松村は自然な語り口の中にも、男の誠実さと哀歓をしのばせて心に残る。絶望の中で、思わず田中を抱きしめるところの演技がとてもよかった。村山は妻を失い、何の希望もなく死を待つに等しい日々のなか、苦衷を決して表に出さず、飄々と生きているように見せかけているという複雑な役どころを演じきった。
    中軸になるのは「心理劇」であり、物語の背景にある政府の「昭和初期化計画」の具体性や必然性はよくわからないまま。もう少し、描き方に丁寧さがほしかった。


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