実演鑑賞
随分前の事だがある若手俳優に所属を聞いて思わず聞き返した劇団名。以来、名を見る度にチェックはするものの文字通り「遠い」存在であったが、今回シアターアルファまで接近。作品への入魂具合を見定めて劇場へ足を運んだ。
馴染みが「ある」とは言えないミュージカルというジャンルについてここ最近吟味する機会が多かったが、日本語オペラのこんにゃく座が独自の世界(本家オペラとは一線を画した)を構築したように、比較的小空間でがっつりストーリーのある舞台に音楽を拮抗させた「ミュージカル」という分野が、中々完成度高く実現している事は新鮮な発見であった(この劇団はその嚆矢なのかも・・等と関心がもたげる)。
観始めは「今なぜ愛新覚羅?」の疑問が脳裏をめぐっていたが、観終わった時は作者の企図が飲み込めていた。歴史上の愛新覚羅溥傑(溥儀の弟)と日本人の妻の足跡を描く筆致は独特(というより若い世代の歴史理解を反映)。そこに危うさがなくもないが(年寄が若者を見る眼差し?)、この歴史の叙述に抜かせない要素を作者なりに掬い上げ、メッセージに結実させていた。音楽は前半メローに寄りすぎか(聴いてて心地好くはあるが)、という印象であったがトータルで多様な風景を作り、レベルは高い。長尺の音楽(多場面を持つ)がミュージカルや音楽劇における「音楽」の面目躍如である。
自分にとっての「意外」は、全体に歌唱力が高い(子役も)。実際の所プロデュース公演の本格ミュージカル以外ではあまりお目にかかった事がない。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/04/08 (土)
シアター・アルファ東京にてミュージカル座『相依為命 ~あいよっていのちをなす~』を観劇。
これは涙腺が緩むミュージカル、、。集中してステージを見ているつもりでも、周りの座席から鼻を啜る音が聞こえたり、ハンカチを持って目頭を押さえていたりする方がいらして、ただでさえジーンと来る内容に、プラスαの感動があったような気がします。2月に拝見した『スター誕生2』、3月の『東京ミュージカル』とはまた違ったテイストの作品。シアター・アルファ東京という初めて足を運んだ会場に加え、独特の会場の雰囲気と相まって、とても印象的で記憶に残る観劇となりました。
今回の作品は、1932年の満州国建国、1937年の中国(愛新覚羅溥傑)と日本(嵯峨浩)の政略結婚など、実際の出来事、実在した2人の人生にスポットを当てながら物語が展開される“歴史も学べる”ミュージカル。タイトルにもなっている「相依為命(そういいめい)~あいよっていのちをなす~」は愛新覚羅溥傑が生涯大切にしていた言葉で、「時代が移り変わっても相手を思いやる気持ちがあれば生きていける」との願いが込めらたものだそう。何かで「相依為命」という文字の並びは見たことがあったような記憶があるのですが、特に深く気にも留めず、読み方も意味も学ぼうとしなかったため、恥ずかしながら今回の観劇を通して読み方、意味を理解しました。なるほど。。きちんと理解すると、良い言葉だなぁ、、と、これはこれで感動がある訳で、ミュージカルを楽しみながら、歴史も学べる今回のような作風はとても価値があるうえに、一石二鳥で単純にお得?だと思うのです。
世の中色々な人がいて、その人の数だけ異なる考え方があるのは当然だと思いますし、基本的にはそれぞれを尊重し合うことが大事だと思いますが、些細なことで争いが生まれ、醜い戦いが繰り返されているのも事実です。歌詞にもあった通り、誰が強くて偉いなどはどうでも良く、人種や国籍、立場なども関係ない。同じ人間同士、相依為命の精神で、平和で自由な世の中になることを願いたいものです。前作の『東京ミュージカル』は全編が歌で構成され、それはそれで斬新でありだと思いましたが、今作のようにしっかりと間を取って、仕草や表情だけで見せるシーンがあるのも良いと感じました。第2幕、特に物語の終盤にかけては完全に涙腺が崩壊しました。このような心が穏やかになる素晴らしいメッセージが込められた作品は多くの人が観るべき。李涛さん、沼尾みゆきさん、吉良茉由子さん、飯塚萌木さんの“一家4人”はもちろん、幼少期役を務めた髙杉奏多さん、前田礼さんの子役2人や、浦壁多恵さんらの好演も印象に残りました。
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1年以上前