自殺対策基本法 公演情報 自殺対策基本法」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    声の力
    『日本国憲法』と同様に声の表現力に重点を置いた作品でした。

    F/Tのチラシや公式サイトではスタンディングと書いてありますが、着席しての鑑賞でした。開演すると照明が消え、60分弱の間、窓から入ってくる外の明かりだけでの上演でした。役者の動きもほとんどなく、入ってくる情報は役者の声(しかし、上演時間の約半分は黙っています)や会場の外の音のみでした。『自殺対策基本法』をテキストにしているみたいですが、文章として聞き取れる部分はほとんどありません。

    前半では5人の役者が音程のある声を次第に大きくして行き、声の重なりから豊かな倍音が生じて、とても神秘的な音環境が生まれていました。その後、ほとんど何も起こらない時間が20分ほど続き、終盤はテキストの読み上げと民謡調の歌が入り交じり、カオスな感じでした。テキストリーディングと歌の混ざり具合が柴田南雄さんのシアターピースの名作『追分節考』を思わせました。

    特異な環境の中で、雨音と時折通る車のライトによって生じる光と影の運動が印象的でした。

    演劇のフォーマットからはかけ離れた作品ですが、リアルタイムで体験しないと分からない質感はとても演劇的だと思いました。
    視覚情報をほとんど消去し、聴覚だけになった本作のあとにどのような作品を作るのか楽しみです。

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