乱歩の恋文 公演情報 乱歩の恋文」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-19件 / 19件中
  • 満足度★★★★

    贅沢な時間でした
    衝撃が強かったせいか、どう伝えたらよいかまるで牛の咀嚼みたいに自分の中で感想を反芻してしまいました。書くことがまとまらなくて。
    「立ち見も出ている」との情報に千秋楽、おそるおそる劇場の入り口に立ったのですが、時間帯のせいもあったのか、余裕をもって席を選べました。自分ではよほどのことがない限り選ばない最前列に陣取り堪能しました(その後、前に補助席が出ましたが)。
    劇内容と魅力についてはほかのかたが非常に詳しく言い尽くしておられるので、自分は思いついたことのみ、いくつかネタバレにて。

    ネタバレBOX

    このお芝居は紀伊國屋ホールのようにレトロな劇場で上演したほうがふさわしい気がして、改めて作品とハコの関係を感じ、興味深かった。ヨーロッパ企画の「曲がれ!スプーン」のときに感じたのとは逆の感想になりますが。
    長田さんは才能を十分に発揮。どこか師匠の井上ひさしさんを思わせるところもあって、その作品の完成度が人によっては逆に違和感を感じるのかもしれない。長編を書く力があっても小劇場のハコに合わせてあえて適度な時間に収める劇作家もいて、それはそれで素晴らしいと私は思っている。
    俳優全員がその世界の人になりきっているのが素晴らしく、すべて語れないが、特に主役の西田さん、以前フライングステージの公演で知って好きになり、そのときは席が後方でよく表情を観ることができなかったので、今回近くで観劇できて嬉しかった。流麗で巧い。役によってこんなに印象が違うとは。彼女の「乱歩の妻」にかかっているという感じでしたね。神保良介さんは新しい一面が発揮できた。横溝と乱歩の関係は、自分が他の本で読んだ印象とはまた違う描かれ方をしていたが、尾崎宇内さんの役者として大切な「役の色気」には感心させられ、何年か前の初見の彼の印象とは全然違っていた。
    すべて人形と思ったのが1人だけ生きているとわかったときのゾッとする妖気の仕掛けなど、劇としての興味は尽きない。「恋文に対する妻の思い」にテーマを集約させ、多くの演劇ファンを魅了させる作品。
    ただ、異なる視点で「乱歩の苦悩に迫りながら文学的本質を描いていない」と厳しい評価を下すかたのレビューもほかの欄で読み、それも一理あると思った。「作家の書ける、書けない」次元で描写が終わっているという批判だが、この戯曲の性格とは少し違うと思うし、そういう批判が出るほど長田さんがかなりの迫り方をしていると私は受け止めた。
    その点も踏まえ、今後にさらなる期待を残すという意味で、あえて☆4つとさせていただきました。
  • 満足度★★★★

    めいいっぱい楽しませていただきました!
    隆子の葛藤、乱歩の苦悩、夢かうつつか分からなくなる傀儡の世界に引き込まれ、
    とても楽しい時間を過ごさせていただきました。
    2時間15分という時間も全く気になりませんでした。

    ネタバレBOX

    隆子が自分のことは乱歩の眼中にないと思って苦しみ、時には憎みながらも
    乱歩を愛し支えていこうとする心の葛藤が切なくも強く伝わってきました。
    乱歩がどんな思いを持って探偵小説を書こうとしたか、そこでの理想と現実の
    ギャップに苦しむところも。
    押しつけがましくないけれど強い思いが込められた台詞と役者さんの魂の
    こもった演技のたまものなのだと思います。

    乱歩は相当わがままで隆子に甘えきりな感じですね。
    それでも節々にわずかながら隆子へのいたわりの気持ちが見られるし、
    本人にも他人にも隆子のことなどどうでもいいようなことを言っているのは
    気持ちが荒れているときだけなんですよね。
    なので心にもないことを言ってしまって弁解もできない不器用なところが
    あったと自分の中では解釈しています。

    ラスト手前で手紙が最初だけは本当だったと乱歩が言って、ラストに
    最初の手紙が届いたころの白昼夢で隆がほほ笑むところで終わるこの
    流れが本当に、いいなあと思いました。

    ただ分かりにくいところもありました。隆が管理している下宿屋と町内会長
    たちの会話が途中で流れが変わっていたはずなのですが、内容がよく
    わからずにそのシーンが終わってしまいあれ?という感じがしました。
    細かい矛盾もちょくちょくあったと思います。

    それでも、それらの気になることろを補って余りあるほどの満足感たっぷりの作品でした。



    息子さんの平井隆太郎さんが乱歩について語った本を読んで、素顔の乱歩に興味を持った矢先にこのお芝居のことを知ったのはある意味運命を感じます。

    ちなみに乱歩の自伝によると、乱歩は独身主義者だったけれど隆子が危篤と聞いてすまないと思ったし、身に余る光栄だと思って独身主義をなげうつ決意をしたと書いてあります。
    手紙の内容は偽りではなく、書いたのは愛していたからだとも。

  • 満足度★★★★★

    構造、語り口なども含めて見事
    評伝戯曲な餡を乱歩的世界(どんでん返しまであり)という皮で包んだ傑作。
    十代に乱歩を読み漁った身にとって引用された複数の作品もすぐにわかって嬉しく、昭和臭と見世物小屋的胡散臭さ(笑)満載な上に変幻自在で様々な場を表現する装置もまた見事。

  • 20101110
    。・`ω´・)ノ

  • 満足度★★

    ナルシズム
    俳優たちの演技がどうにも自分に酔っているように思われ受け付けなかった。演技の問題というより台詞の問題かもしれない。主演の女優にだけは説得力を感じた。

  • 満足度

    客入れ要領が悪い・・・
    本編の内容以外のところで色々と気分を害してしまい、まともに舞台を楽しむ余裕がなかったです。

    ネタバレBOX

    予約していた受付を済ませると「あちらで並んでお待ちください」と言われる。
    でも、前の人が全然入場しようとしない。
    客入れはイソイソと動き回っているけど客席が足りないのか、席を作りながら案内している。
    で、待ってたらどんどん後から来たほかの客が先に案内されてゆく。

    いつまで待てば良いんだろう?と思って聞いたら「あ、じゃあ席を作るんでお待ちください」だって。
    単に受付と客入れの連携が悪いだけだと思うけど、そのために後から来た客を横目に待たされる不愉快さを考えて欲しいです。
    しばらく待たされて通されたのは、無理やり作った最前列のミニチュアパイプイス席。
    座るだけでつらいし、最前列でみづらいし、ケツは痛くなるし・・・。

    もう、公演の内容以外のところで見る気をすっかり無くされました。
    多分この団体はもう見る事はないと思います。

    絶賛の書込みが多い中(うち半分は身内のサクラに思えますが)申し訳ないけど、話は引き込まれるわけでもなく、共感するわけでもなく中途半端な感じ。
    あと、この小さな劇場に不釣合いな、不必要なくらい大きな芝居に興味を失いました。
    ウマい役者さんたちなのかもしれないけど、こういった小さな小屋だといかにも「お芝居」しているようにしか見えなくて、見ていて恥ずかしい。
    しかも2時間以上の上演時間。

    更に上演後に「良かったと思ったら宣伝してください!」アピールを延々続けるのでカンベンしてください。
    腰もお尻も痛いので早く立ち去りたいのに。。。

    当パンの無い席だったので、普段ならスタッフに声をかけてもらうのですが、この時は客入れも席も芝居内容も不満で、初めて当パンをもらわないまま即帰宅しました。
  • 満足度★★★★

    充分な満足感
    乱歩の作品は、人間の恐怖、倦怠、快楽、苦痛、遊戯など読んでは厭きる事がなくいつも新鮮に感じる。そんな乱歩の妻ありきで描く世界は眼を瞠るものがありました。てがみ座から貰う手紙(公演)を読むのが楽しみになりました。

    ネタバレBOX

    生き人形の首、手首などに巻かれている紐が良いですね。人形なんだと解りやすくもありまた、何かに操られるような人間の性を感じる。
    襖1枚で笑えた。






  • 満足度★★★★★

    よかったー。
    もう、最初のセリフを聞いた瞬間に絶対間違いないと思いました。

    2時間なんて、そんな長かったか?と思うくらい濃密。

    やっぱり巡り合うもんなんだなぁと思いました!!!!

    みなきゃ損。ほんと損。

  • 満足度★★★

    西田夏奈子の恐るべし安定感!
    どんな設定であれリアリティーを持たせてしまう存在感が凄い!

    ネタバレBOX

    そんな彼女をもってしても方言芝居となると、
    イントネーションの再現に足を引っ張られてしまうよなぁ。
    さすがに他のキャストと比較すると、
    豊潤な感情表現でそのあたりはリカバーしているのだけど、
    どうしても会話に乗り切れなく感じてしまうのが残念。
    ま、関西圏の出身&言葉を扱う仕事の方でなければ、
    全く何のことか分からない指摘かも知れませんが...。
  • 満足度★★★★

    2時間超って
    たいてい途中で飽きる自分が、飽きなかった。西田さんがいい感じだ。

  • 満足度★★★

    みた
    「乱歩」の物語としても「恋文」の物語としても薄味だった。

    会場に入った時には期待が高まったが、2時間超見ていられたのは役者と照明の賜物。
    なくてもいい役や美術も結構あったように思う。

  • 201011071900
    201011071900@王子小劇場

  • 満足度★★★★

    世界観を堪能
    「ミミクリ」で好きになった和田真季乃さんが出演ということで公演をチェックしていました。妖しげで幻想的な雰囲気にも惹かれてチケットを確保しました。
    和田さんは傀儡で乱歩の妻、隆を演じていました。

    傀儡たちが観(魅)せる芝居は、その舞台美術も相俟って、予想していた以上の世界を創り上げていました。
    所々にはさまれるコメディ要素も悪くなかったけれど、後半の隆子が想いを必死に訴える場面ではないほうが良かったなとは思います。そこが少し残念でした。一切コメディ要素のないバージョンというものを観てみたいなと思いました。

    隆子と太郎(乱歩)の関係は、観ていて苦しく哀しくもありましたが、出演者たちの生きた芝居に浸りました。

    ネタバレBOX

    最後、太郎からの手紙を受け取った隆に、「読むのはやめなさい。その手紙はあなたを遠くへ連れて行くから」と制止する隆子のシーンは、同じ気持ちで観ていました。遠くへ行くならいいこともたくさんあるはずと答えて読む隆。そしてその恋文を読んで笑顔を見せるラストシーンは心に残りました。
  • 満足度★★★★★

    主観と客観の織り上げ方
    浅草の世界と現実。そこには渾然としていながら明確な主観と客観の視座があって・・・。

    二人の生きざまの綾織りに広く深く取り込まれてしまいました

    ネタバレBOX

    創作に行き詰った作家が逃亡をする冒頭のシーンは
    どこかコミカルですらあり、
    ほんの少し冗長な感じもしました。

    しかし、そこから傀儡師の世界が現れ
    人形芝居の客観で
    記憶が演じられると
    舞台に深い奥行きが生まれ
    やがて息が詰まるほどに取り込まれてしまいました。

    江戸川乱歩夫婦の慣れ染めから
    極貧の時代、
    夫婦喧嘩から垣間見えるそれぞれの想い、
    互いの距離感のようなもの・・・。

    人形芝居という建前で
    再現されるそれぞれのシーンに
    観客的な立ち位置を持った妻の想いが編み込まれていく。
    単に夫婦の歴史が語られるのではなく
    刹那の心情を回顧する
    舞台上の今というか別の視座が
    縫い込まれていくのです。

    個々のシーンが本当に瑞々しい。
    夫婦の会話から溢れる
    絶妙なウィット。
    塗り込められたトーンのさらに奥を照らし出す
    いくつもの台詞たち。

    夫の才能が開花する時の
    原稿を読者にばらまく表現には
    グルーブ感に包まれた高揚があり、
    一方で創作が生き詰まる閉塞感の先にある
    「グロ」感覚の気配も質量をもって伝わってくる。

    奥行きをもった舞台装置が
    そのまま、夫婦の時間の広がりに重なっています。
    人形芝居に接した妻が
    まるでその芝居を観るさらに外側の観客のごとく
    取り込まれていく。
    虚としての実が現れ、
    実が見えるから浮かび上がる虚があって・・・。
    単に夫婦ふたりの世界にせず
    兄弟たちの描写や
    横溝正史をなどをからめた出版社の風景を組み込むことで
    時間に実存感が生まれ
    人形芝居の客観が
    妻の主観によどまない。

    おじさんの踊りや
    出版社の女子社員のおしゃべりなどが形作る
    伏線というか物語に埋め込まれた梁の貫き方にも
    物語を盲目的な閉塞に崩さない手練があって・・・。

    人形たちの糸が断ち切れ
    現の世界に戻る
    あばら家の質感は
    観る側の目まで醒ましてくれるよう・・・。

    そして、タイトルの乱歩の恋文が伝わってくるとき、
    夫婦の生きてきた感覚が
    機微とともに観る側に染み入ってくるのです。

    舞台美術も秀逸、
    役者たちには個々のシーンを踏み込んで演じるような技量を感じて。

    海辺の町での出会いから
    編み込まれて行った時間たちの
    個々の重さと編み上がったものの不思議な軽さを同時に抱いて、
    気持ちをいっぱいにしながらの
    家路となりました。

    ☆☆◎☆☆☆◎○●


  • 満足度★★★★★

    この劇場で、こういう作品に出会えるとは!!
    一言で言って、期待以上!!
    脚本・演出・舞台美術・そして演者のみなさん、
    すべてにおいて期待以上の満足感でした。

  • 満足度★★★

    堪能
    演劇を堪能するというのはこういう体験なのだなあと感じさせてもらいました。
    練った戯曲と、若くても練達と言いたい達者な役者さん揃いで、それを的確に活かす演出。(扇田さんは役者としても好きですが)
    濃密な2時間15分でした。
    長田さんの戯曲はそれぞれの人が生き生きしていてすてきです。

    ネタバレBOX

    長田さんの作品は好きなのですが、なんだろう、もう一歩食い足りない気がするのは。

    どの人もどの場面もやりとりがぴったり、丁々発止も見ていて気持ちがいい。すごいひとが集まった舞台なのだと実感。

    ただ・・・それがうまく流れすぎているという感がしないでもないです。
    隆子の懊悩が、途中ではとても大きいのに、終わってみると「そんなこともあったね」くらいに感じられるのは、狙ったのかもしれないけど、自分的には物足りない気がしました。

    うますぎるというのは変な感想だろうか・・・
  • 満足度

    残念です
    コレだけ評価の良いものにあまり書きたくは無いのですが

    私には全く面白くありませんでした

    ネタバレBOX

    正直 残るシーンがない

    出来れば
    王子小劇場ではなく
    日生劇場などで上演をされたほうが良い作品だと思います

    とにかく
    薄っぺらい
    最後の妻一人のシーンで泣いて欲しいがために
    ただ2時間作ったとしか感じません

    乱歩物が好きなので
    演劇、芝居、色々観ていますが
    今までで一番ダメでした
    乱歩好きの方にはオススメ出来ません

    本当に残念です
  • 満足度★★★★★

    桁違い!!
    濃密な時間でした。

    役者もいいし、横綱相撲、圧倒的にいい!!

    ネタバレBOX

    若いころの奥さん(隆)は綺麗でした、目力もあって素敵です!和田真季乃さん最高!!

    隆(りゅう)が男っぽい名前だからと、子を付けたというのもおおらかな時代でいいですね。

    紐の切れ端を体につけた傀儡(人形)たちが演じる乱歩夫婦の物語。薄暗い中、後ろ向きの傀儡にそれぞれ細いライトが当たっていて、スポットライトの要素の他に、あやつりの糸を表現する心憎さでした。

    傀儡師(人形遣い)が人形だったり、人形が傀儡師の流れをくむ娘が人形に変わってしまったものだったり、隆子の見た白日夢の世界は幻想的でした。さらに時に隆と隆子が本人同士で話し合ったり、タイムトラベル物では絶対にあり得ないシチュエーションで、こういうのを奇譚というなら奇譚も好きになれそうです。

    隆が上京した当初の様子から、太郎は本当は結婚したくなかったのかなと隆が少し可哀そうになりました。最初の頃は本気でも、そのうち手紙を書かなくなったのはフェードアウトを図ったためというのも確かに一理あります。隆子に読み聞かせて最終的に脱稿する、そんな才能のためにだけ存在意義があったというのでは可哀そうです。

    エログロに反発した隆子、そうですよね、何となく乱歩の本は買いづらいというところがあります。

    それでも、乱歩の最高の愛読者であった隆子が、書けなくなった乱歩に少年向け探偵小説という新しいジャンルへ目を向けさせるきっかけを作るなど、命を掛けて誠心誠意支え続けていたことが伝わってきました。

    手紙に込められた気持ちは本当だったという乱歩の言葉も、最初の頃は本当だったんでしょうよという気もしましたが、ずーっと照れて忘れていたような振りをしていたことから恋文だったということで納得しましょう。

    最後、隆子が乱歩を救い出すことができて本当に良かったです!

    セットも素敵でした。上部も有効に使い、編集室と上に続く階段が裏表になっている大道具、上から下りてくる電信柱など素晴らしかったですが、何よりもスムーズに開閉する障子の、手を見せ、姿を見せるタイミングの絶妙さが何とも心地良い気分にしてくれました。
  • 満足度★★★★★

    素晴らしすぎて声も出ない!!
    何でしょう!!長田育恵さんて!!才気に溢れすぎています。

    とにかく、旗揚げから拝見していますが、観る芝居、観る芝居、作風が全く違い、一体この作家はどれだけの味付けの戯曲を物すことができるのか!!
    と、まずそのことに驚愕します。

    ベタな部分もたくさんあるのに、そのベタさが特化していて、全然嫌な気がせず、逆に、観てて気持ちが良いくらい。
    リアル以上にリアル。乱歩とその妻は、本当に、真実、こういうヒトだったに違いないと、思えて来る。

    井上ひさしが、「人間合格」で、新たな太宰像を鮮烈に描いたように、長田さんは、独自の視点と切り口で、見事に、新たな乱歩像を、舞台上に生き生きと投射して見せて下さいました。

    脚本、演出、キャスト、スタッフの仕事ぶり、全てが一級品の舞台。
    素晴らしい!!私的には、今年観たどの作品より、演劇賞に一番相応しい作品だと思いました。

    演劇を本当に愛する方には、必見の舞台だと、自信を持って断言できます。

    ネタバレBOX

    今までも、作家を主人公にした名作舞台には、幾つか出会いました。

    でも、この作品が、それらと異なるのは、この作品の主人公は、あくまでも、乱歩の妻、作家の妻である点でしょう。

    この乱歩の妻を演じた、西田さんと、和田さんが、共に、魅力的な女優さんで、長田さんは、作家としての才能はもちろん、プロデューサー感覚にも、優れていると感心しました。

    長田さんの紡ぎ出す台詞の、心に深く残る美しさには、感嘆するし、この作品の味わいを、本物にした、扇田さんの演出力にも目を見張りました。
    キャストも、今までのてがみ座公演中、ダントツ粒揃いのメンバーでした。

    最後の場面も、あーすることで、作家を描くのではなく、作家の妻になった隆子を描いたこの作品の帰結として、大変秀逸なラストシーンとなっていました。もし、男性作家なら、乱歩と妻が、朝の浅草の街に光明に導かれ、出て行くところで、幕にするのではと思いました。

    乱歩のこの先の作家人生も、くどくど説明したりせず、「怪人20面相」等、知っている人には匂わせ、そうでない観客には、興味を持たせる台詞に終始し、長田さんは、決して、調べた資料の知識をひけらかさないのが、またこの作品の質を高めています。

    普通なら、陰隠滅滅とする素材なのに、所々に、無理のない笑いも盛り込み、本当に、劇作家としての並々ならぬ才気を感じるばかりでした。

    演出の手腕もまた素晴らしく、場転の、ヒトの動きすら、舞台上の作意に転化する業には度肝を抜かれました。

    全てが、刺激的で、目も耳も、感覚も、演劇好きの血も、鋭く研ぎ澄まされ、久しぶりに、五感がワクワクしっぱなしの2時間15分でした。

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