柴幸男クラス『さよなら東京』 公演情報 柴幸男クラス『さよなら東京』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    柴幸男作品に仕上がっていた
    柴幸男さん作・演出という事ならどうしても見ておきたい、という事で見てきました。

    ENBUゼミの卒業公演ということで、本格的に客の入る舞台ははじめてというゼミ生たちによる舞台。
    でも、あまりそういった事を感じさせない舞台でした。
    役者が誰でもどうとでも出来る演出という感じで、役者個人、個性はなかなか感じ取れなかったけど、こういったアプローチの仕方もあるのかと。
    上演時間は45分くらい? + アフタートーク15分

    ネタバレBOX

    ことば遊びが多用されたセリフ。

    誰かが誰か特定の人物を演じる、と決まっているのは主人公を演じた、開場時から舞台のイスに座っていた女の子のみで、それ以外は流動的。
    そして、役者陣に細かく言葉を割って、ある時は同時に、ある時は掛け合う感じ。
    フォーメーションを組んで、色々な動きを見せつつシーンを椅子と映像で転換してゆく。

    今回は映像を大胆に取り込んだのが、柴演出としては新しい試みだと思います。
    東京の雑踏の映像だけど、どこか無機質に、背景として写し出されていく。

    「さよなら東京」のタイトルだけど、柴さんの話を聞く限りだと東京との別れよりは「上京するということ」がテーマになっているようです。
    妹は姉がいる東京へ出てきた。
    けど、姉は更に遠く、海外へ行ってしまった。
    そして、最終的に帰らぬひととなってしまう。

    追いかけても追いつかない、そんな「東京」という幻想を姉の背中に映したような感じで、何か特別なストーリーが展開されるわけではない。

    柴さんは、まさにこれが役者としての第一歩という今回のゼミの生徒たちに、10年前の自分の姿を映して書いたという。
    けど、分析はもっと冷静で、今は「上京」という、東京に行けば夢が叶う的な幻想は希薄になっているのではないか、とも語っていました。
    10年前の柴さんは東京で戯曲化として成功することを夢見て上京してきたというけど、今回のゼミ生はあまりそういった意識もないようで、「会社に行けと命じられたから東京に来た」とかリアルな話がトークでも飛び出していました。


    作品としては、柴さんらしさを感じました。
    対話ではなく、感覚で選び出した言葉たちを言葉遊びしつつ声を揃えてつなげてゆくあたり。
    そして役者の個というか人間性というか、それらを感じさせないあたりがそう感じさせたのかもしれません。
    でも主演の女の子はいるだけで存在感があった事も事実でした。

    何だか不思議な柴ワールド全開の作品でした。

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