死ぬのは私ではない 公演情報 死ぬのは私ではない」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    テーマ自体は、難しいけれど
    久しぶりの古城作品、やはりいろんな意味で、見応えありました。
    死刑について考えさせる、テーマ自体は重たいし、瞬時に答えも出せない、難問を提示したような芝居ではありますが、古城さんの作品は、社会派であっても、演劇として、しっかり成立する要素の揃ったものなので、基本的に、いつも面白く拝見することができて、大好きです。

    今回の舞台も、実際の事件に材を取り、作者自身の疑問や政治や社会に対する不審などを提示した大テーマがあるけれど、演劇作品として、不可欠なストーリー性や、登場人物の肉づけ、構成も見事な、無駄のない展開で、やはり古城さんは、演劇界でも、あまりいないタイプの得難い作家であり、演出家でいらっしゃると、感心しました。
    アフタートークも含め、久々に、観劇後、少し、思慮深くなったように、錯覚できる、貴重な体験をさせて頂きました。

    一跡ニ跳を解散されて淋しく思っていましたが、ワンツーワークスとして再スタートを切られて、今後の作品がまた楽しみになりました。
    最初に、主人公の幸司役を演じられた、越智哲也さんは、目力と言い、ひときわ異彩を放つ役者さんで、今後、注目したい若手男優さんがまた一人増えました。

    ネタバレBOX


    実際の事件に材を取り、死刑制度に対する、古城さんの様々な疑問を、演劇という形態で、提示した舞台でした。
    死刑を執行される幸司と、その双子の兄で、こちらは無期懲役になる憲司の2人の役は、キャスト7人で、代わる代わる演じるという、斬新な手法で、つまりは、一つの裁判を誰目線で見るのか、その目線によって、一つの事件や、被告の人間分析も変化するのだという、実験劇風作りになっていて、興味深く、拝見することができました。
    観終わった後、私も、死刑制度に対する疑問や、ではどうあるのがベストなのだろうとか、いろいろ考えあぐねてしまいました。

    でも、とにかく古城さんの作品は、そういった作者の思いを上から目線で押し付けるのではなく、きちんと、演劇として、芝居として、破綻なく、観客を常に厭きさせずに、最後まで見せてしまう手腕がお見事で、感服しました。
    たとえば、この事件を取材する、女性ジャーナリストは、別居している夫と、話し合ってももはや意味がないと思っていたのに、取材するうちに、死刑を宣告された極悪人の被告が、人間性を回復する事実に触れて、最後、夫との話し合いに応じる様子を見せます。こういった、ストーリーの本流とは違う視点で、何気なく描く、登場人物の背景の見せ方が秀逸でした。

    ただ、最初にある、コンテンポラリーダンス風の振付は、同じ振りがやや長すぎて、しつこい感じがしましたし、終盤の方の振付は、せっかくリアリティのある芝居の流れを壊し、不要というか蛇足というか、むしろあの演出はない方が良かった気がして、それだけがちょっと残念でした。

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