満足度★★★★★
山本東次郎との共演が実現
現在ほど、狂言が上演されている時代はないと言ってよいほど、毎日、どこかでいろいろな狂言の会が催されている。中でも京都を本拠とする大蔵流茂山家は「お豆腐狂言」を名乗り、武家式楽の一部としての格式を取り払うかのように町衆系統の親しみやすい狂言を普及させることをめざして全国的に活動し、多分に商業主義的な側面を持つ。和泉流の野村萬斎と共演することもあり、萬斎と並び、若い女性ファンが多い。「とにかく笑ってもらおう」という近代的なサービス精神が強く、「節度と品格ある人間ドラマ」を目指す東京の大蔵流山本家とは対極にある。
私が今回、この会を観にいったのは、大蔵流山本家当主である山本東次郎が茂山千作・千之丞兄弟と共演する稀有な舞台を見届けたいからである。私はどちらかと言えば、山本家びいきなのである。茂山家は、同じ大蔵流の山本家よりも、和泉流の野村萬斎とのほうがやりやすいと言っているほどで、大蔵流両家がひとつ舞台の同じ演目で共演する機会はほとんどない。
この奇跡的とも言える機会を逃したくなかった。