満足度★★★★
不思議な世界を魅力たっぷりに描く!
Bプログラムを観させていただいた。作、阿藤智恵、演出=冨士川正美というオリジナル作品『バス停のカモメ』。Aプログラムで別役実の三本立てをやり、Bプログラムでオリジナルをやり、共通するモチーフはバス停というところが面白い。
舞台にはバス停がひとつ。 いかにも別役実の世界のような舞台装置。しばらく、物語は別役作品のように不条理感たっぷりの言葉遊びが続く。しかし、この作品は単なる別役実へのオマージュではない。あえていえば、別役実にチェーホフを掛け合わせて、化学反応を楽しもうとうような作品。全く相反するものが、混ぜ合わせて食べると意外とおいしかったりするが、それに当たるのが今回の作品。チェーホフと別役実、意外と合うじゃないと感じた。
もちろん、作品自体は阿藤智慧のオリジナル作品であり、そこに描かれるのは阿藤智慧の世界であることは間違いない。物語の中に閉じこめられた家族、そのフィクションの中で生きる人々が外界へ出ようとする物語と、仕事で旅をする男が迷宮に迷い込んだ物語を両A面で見せてくれるようなストーリー。シンプルだが奥が深く、想像力にあふれる物語だ。(続きはネタバレで)