満足度★★★
早出の余禄
開場してすぐに入ったら、開演までまだ30分近くあるというのに、カジワラトシオともう一人、JON(犬)という人の演奏で、東野祥子がすでに踊っていて、結局それは開演間際まで続いた。あとでわかったのだが、今回、東野は本編には出演しておらず、開演前のこのパフォーマンスは、一種のファンサービスだったようだ。6月にやったソロ公演「メス」の続きを見ているようで、これだけでもけっこうおなかが膨れた。
おなかが膨れるといえば、本編では妊婦たちのダンスがあり、風船のような巨乳の女性も登場した。どちらも実際は詰め物。それから後半になると男性3人が女装で現われ、女性陣の激しい群舞とは対照的に優雅な振るまいを見せる。映像では昆虫の交尾シーンが舞台奥に大写しされたが、これはなかなかグロテスクだった。
このへんの表現は、ジェンダーとかフェミニズムを扱ったものだと、パンフに載っている文章の中で、作者がわざわざ解説している。今回はたぶん作り手に徹したせいだろう、批評家的な言説というか、けっこうむずかしい理屈が並んでいるのが意外だった。タイトルに使われているリゾームなんて言葉は、恥ずかしながら拙者、今回の公演で初めて知ったでござる。
面白い場面、いまいちな場面とあれこれあったが、以前、東野のインタビューの中で、寺山修司が好きだといっていたことを、今回の作品を見ているうちに思い出した。彼女の作品に感じるある種の不気味さ、特に異形のものへのこだわりが、寺山作品と繋がっているような気がしたのだ。