満足度★★
ハードなのはハード
内容が、というか演技が非常にハード。
あれだけのエネルギーを放出し続けることができるのは驚嘆。
ただ物語の内容は賛否の分かれるところ。
こういう話をこういう表現の仕方で上演する劇団だと知っている人にとっては
いいのかもしれない。
話が進むほど、いろんなことが明らかになっていき、
展開そのものには「ああ、そうだったのか」と素直に思えた。
「死」に関して、いろんな考えや思いを持っている人がいるだろう。
この劇団ではこういう考え方です、と客に提示するのはいいが
賛同できない部分でも、やたら灼熱で畳みかけてくることに拒否感を覚える。
舞台で「死」や「殺し」を行うのは、
それをやる必然性とやる意味が十二分にあるときだけではないか。
もちろんやる側にはそれがあったのだろうが、
(主張は理解できたが)自分にとってそこまでの意味は見出せなかった。
一度、席に座ってしまったお客は最後まで身動きが取れない。
肌の合わない方には、熱い分だけつらい時間をすごさなければならないこともある。
舞台役者の方々は演技がよかったのだが、今回は違った話が見てみたいと思った。
満足度★★★★★
どんな事情でも復讐なんてしちゃダメよ
かつて車で死亡事故を起こし服役していた男・大山が出所後に乗った長距離バスで想像を絶する体験をする物語。
観終わっての印象は「重いなぁ、ビターだなぁ」「大山に対するペナルティが重すぎるのでは?」なのだが、その分「どんな理由があろうとも決して復讐などしてはイケナイ」というテーマが強く押し出されているワケで。
今までに観た「復讐の連鎖は断ち切るべき」系のものが主人公が自らの意思(意志?)によって復讐をやめる(あるいはやめさせる)のに対して、本作は復讐をすでにしてしまった主人公がそれに起因した不思議な体験をするということで、閻魔堂の地獄図によって「生前悪いことをすると地獄でヒドい目に遭いますよ」と脅している感覚に近いかも?などと思ったりも。(笑)
また、「賽の河原」的場所で大山が被害者夫妻から謝罪されるのは服役して一般的に罪は償っていても根は優しい人物なので被害者に対してずっと負い目を感じ続けるであろう大山への救いか、と思わせておきながら終盤で、やっと「生きたい」と思い始めた双葉を(苦痛から救うためとはいえ)手にかけなくてはならなくなるというのは、その落差もあってホントにヘヴィー。がしかし非常に巧い。
あと、舞台左右にある階下の楽屋へつながるハッチも劇中で使うために左右も隠さずすべて露わにし、出ハケは客席入口から舞台にむけて設置した花道を使う装置プランや、ほぼ素の舞台に椅子だけ設置してバスの輪郭は照明によって表現するアイデアなども◎。
決してハッピーエンドと言えない終わり方や、大山の行動の意図が曲解されかねない(あるいは理解されにくいかもしれない)ことなどから、万人にオススメとは言いにくいが、個人的には高評価。