満足度★★★★
交響曲のツクリにも似て
新右翼活動家でスパイ粛清事件により投獄され獄中で小説を執筆した見沢知廉を描いたシリーズの最新作、恒例のプレ・パフォーマンス・トークと wikipedia による予習に加えて、ここまでに3作品(+短編1作)を観て手口(笑)がわかっていることもありスンナリと呑み込む。
ストーリーを紡ぐのではなく、原作(未読)や原作と共通するドストエフスキーの「死の家の記録」(←これはプレ・パフォーマンス・トークで知った)の部分部分を読み上げたりするコラージュなども用いて、母との濃密な関係も含めた見沢自身の内面まで表現しようというスタイル、それは複数のテーマやモチーフが表れては消え再現されたり同時に奏されたりしながら1つの大きな流れを作って行く交響曲のツクリにも似て、「あぁ、そういうことかぁ!」と。
スパイ粛清の際に着ていたという皮ジャン(本物)を着た人物が次々に見沢となる手法(ラストでそれを総括する部分まである)とか、時には監獄、時には胎内回帰の象徴のように見える装置、劇団員総出で書き綴った(!)という小道具(しかも消え物ですぜ)など「そう来ましたかぁ」なアイデアもあって観応えも十分、やっぱり芝居ならではの表現ってイイなぁ。