実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/03 (金) 13:00
今年3回目の加藤健一事務所の京都公演。ずっと京都で続けてくださるのがとても嬉しい。1時開演と6時開演の2公演のマチネを鑑賞。
基になっているのはイギリスを代表するストーリーテラーのグレアム・グリーン(Henry Graham Greene)が1969年に発表した小説。グリーンは1904年にロンドン郊外に生まれ、オクスフォード大学(University of Oxford)を卒業後、タイムズ(The Times)紙でジャーナリストとして活躍したのち、1929年の処女長編作「内なる私(The Man Within)」で小説家デビュー。その後、多くの作品を発表。
1949年発表の「第三の男(The Third Man)」はキャロル・リード(Carol Reed)監督による映画化を前提とした作品で、グリーンは脚本も担当し、1950年公開の映画は大ヒットした。1950年にはノーベル文学賞にノミネートされたが、結局最後まで受賞できなかった。1991年にスイスで亡くなった。享年86歳。
この作品を1989年に4人の男優だけで表現する戯曲にしたのが、イギリス人の劇作家であり俳優や演出家のジャイルズ・ハヴァガル(Giles Havergal)。初演の際には自身がその1人として参加した(今回の公演のカトケンさんと同じ役)。
彼は1938年スコットランドのエジンバラ(Edinburgh)生まれ。1969年から2003年までグラスゴー(Glasgow)の市民劇場(Citizens Theatre)のディレクターを務め、劇場運営に大きな革命を起こし、英国を代表する劇場のひとつとしての地位を築き上げた。
現在(2021年)83歳だが、スコットランド王立スコットランド音楽院(Royal Conservatoire of Scotland)やサンフランシスコ(San Francisco)のアメリカ音楽院(American Conservatory Theater)で教鞭を取っている。
翻訳は英文学者、翻訳家で現在は早稲田大学文化構想学部教授の小田島恒志。1962年生まれで早大大学院博士課程単位取得満期退学、ロンドン大学大学院修士課程修了。妻の小田島則子との共訳による翻訳が多い。
この作品の初演は1989年11月10日で、グラスゴーの市民劇場。その後、ロンドン(London)のウエストエンド劇場(West End theatres)、ニューヨーク(New York)のオフブロードウェイ、サンフランシスコでも上演された。1993年度にイギリス版のトニー賞とも云えるローレンス・オリヴィエ賞(Laurence Olivier Award)の最優秀エンタテイメント賞(Best Entertainment)を受賞している。
1972年にジョージ・キューカー(George Cukor)監督、マギー・スミス(Maggie Smith)主演で映画化されているが、これは戯曲化以前であり、小説を脚色したもの。この映画は第45回アカデミー賞(45th Academy Awards)の主演女優賞(Best Actress)など4部門にノミネートされ、衣裳デザイン賞(Best Costume Design)を受賞している。ちなみにこの年の作品賞(Best Picture)は「ゴッドファーザー(The Godfather)」で、主演女優賞は「キャバレー(Cabaret)」のライザ・ミネリ(Liza Minnelli)。
日本でも演劇ファンに人気の高い作品で、日本初演は1995年。演劇集団円で、橋爪功、有川博、勝部演之、吉見一豊のベテラン俳優が演じ、好評を博した。今回の加藤健一事務所公演は先月(2021年11月)に池袋のサンシャイン劇場で行われ、この日の京都公演の後は、翌週に所沢の市民文化センター ミューズのマーキーホールで行われる。
24人の老若男女の登場人物をたった4人の男優で演じ分ける、奇妙で幻想的で笑いの冒険、ロードムービー的躍動感の風刺劇。1人が単に何役も演じ分けるだけでなく、語り手でもあり、主人公でもあるヘンリー(Henry Pulling)すら複数の男優が演じる。それも会話の途中で人が変わる。最初は「これ、何?、何してるの?」って思ってしまった。
また、作品の舞台も、ロンドンからフランス、オリエント急行、そして南米のアルゼンチンからパラグアイと変わる波乱万丈のストーリー。でも、本を読んでいるかのような芝居なんだよね、これが。時代設定は特に明確にされないが、小説が書かれた1960年代後半と思われる。あまり、時代感はない。最後の舞台となるパラグアイの首都アスンシオンには何年か前に滞在したことがあるので懐かしかったな。
演じる4人はカトケンさんの他、天宮良さん、清水明彦さん、加藤義宗さん。天宮さんは1962年4月生まれ。東京都三鷹市出身。1984年に日テレ系のドラマ「昨日、悲別で」の主演で俳優デビュー。NHK大河にも3回出演している。現在も多くのドラマで脇役を務めている。
清水さんは天宮さんより少し早い1962年1月生まれで千葉県出身。文学座所属。舞台、映画、テレビドラマだけでなく吹替やアニメの声優も多く務めている。清水さんもNHK大河に2回出演している。
加藤義宗さんはカトケンさんの息子。1980年1月生まれ。1996年の加藤健一事務所の「私はラッパポートじゃないよ」が初舞台。自身のプロデュースユニット「義庵」も2020年に立ち上げている。
演出の鵜山仁さんは1953年3月奈良県大和高田市生まれで、奈良女子大学文学部附属高等学校、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。文学座に所属し、劇団の内外で精力的に活動を続け、多くの賞を受賞している。2007年から2010年までは、新国立劇場の演劇部門の第4代芸術監督を務めた。現在は日本演出者協会理事。舞台芸術学院学長。
上演時間は前半が1時間15分で、15分休憩の後、後半1時間の合計2時間半。今回の芝居は、もちろんカトケンさんらしい笑いの要素も多いのではあるが、コメディーと云うよりもやはりドラマって感じ。正直話に付いて行けないようなところもあった。個人的にはあまり好みではない。カトケンさんらしいコメディーが好きだな、私は。
終演後10分ほど時間を空けて京都公演恒例のアフタートーク。今回もアルティ館長の雨宮章さんの司会で、カトケンさんと息子の義宗さんのお話を30分足らず聞かせて戴く。4時10分頃終了。
加藤さんの京都公演、次回は来年(2022年)5月初めに「サンシャイン・ボーイズ(The Sunshine Boys)」。2020年の5月に公演予定だったのがコロナ禍で中止となったもので、佐藤B作さんらと演じる。ニール・サイモン(Neil Simon)の作品と云うことでこれは笑いを期待できそう!
以上
この公演に関するtwitter
初日1週間前から「団体名」と「公演タイトル」を含むツイートを自動表示します。
(ツイート取得対象にするテキストは公演情報編集ページで設定できます。)
加藤健一事務所「叔母との旅」全旅程を終えることができました! ヘンリーと叔母さんの旅は続くのでしょう(о´∀`о) 義宗さんがピンクウィッグをかぶって出るシーン、実は大きなホクロがあったのです。 真顔でホクロを付けピンク髪を揺ら… https://t.co/KOoo7URNPJ
約3年前
加藤健一事務所公演"叔母との旅"今日の2時から所沢ミューズマーキーホール、大千穐楽です。24役を4人で、主役のヘンリーを4人の役者で演じ分けるのが面白いです😊
約3年前
11月の演劇体験 野田地図番外公演「THE BEE」 劇団た組「ぽに」 「水深ゼロメートルから」 iaku「フタマツヅキ」 阿佐ヶ谷スパイダース「老いと建築」 加藤健一事務所「叔母との旅」 12月の演劇体験 「愛するとき死するとき」 劇団桟敷童子「飛ぶ太陽」
約3年前
12/4(土) 加藤健一事務所「叔母との旅」を京都まで観に行ってきた。初のアルティ。 次々に役が変わり、台詞がリレーされていっても切り替わりが明確なので見てて全く混乱しなかった。大小の謎が散りばめられてるのも(後からアッと気付いたのも)楽しかった
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」 @アルティ 4人の男優で老若男女20人以上を演じるという作品。同じ人物も、次から次へと異なる俳優が演じ、付いていけてなかった。演じている人が、いちばん楽しんでいる感。
約3年前
今日は京都府民ホールアルティで加藤健一事務所『叔母との旅」を観てきました。
約3年前
おはようございます🌤 昨夜は最高❣️スチョリさん、広沢さん、3人の心地よいハーモニー🎵 何より馬場さんの伸びやかで優しい歌声❣️ 好きな人たちとの共演に嬉し楽しの笑顔💕💕 胸に響き涙した曲たち🎵パワー満タン! 余韻に浸りながら今日… https://t.co/YHiLm5ejAR
約3年前
【2021/12/04土 13:00-/18:00-】[京都府/今出川]京都府立府民ホール“アルティ”▽加藤健一事務所 「叔母との旅」▽https://t.co/gf9LHP5xaM(本日のみ)
約3年前
日曜日は加藤健一事務所「叔母との旅」観劇。本多ではなくサンシャイン劇場!と何度も確認。(笑)記憶が薄れてはいるけど昔シスカンパニーが上演したものとは結構演出が違ってたと思う。常に複数のヘンリーが同時に存在している感じで、ちょっと微… https://t.co/hldgnDwwp7
約3年前
加藤健一事務所 叔母との旅 とても良かった。4人で主役、脇役は1人が多役、これぞ演劇という演出。これで波乱万丈のストーリーを編み出し、そして人生じわじわ死んでいくより楽しく生きていく方がよいんじゃないかということを力強く訴えかけてきました。ずっとハラハラどきどきでしたよ。
約3年前
これからサンシャイン劇場にて、加藤健一事務所『叔母との旅』千穐楽。『叔母との旅』、シス・カンパニーでの公演を初演・再演と観ていて大好きな作品なんだけど、シス・カンパニーは青山円形劇場でやったんですよね。あのテンポの良さが心地よかっ… https://t.co/JQmw0SHH3o
約3年前
昨日は加藤健一事務所「叔母との旅」観劇。 4人の役者さんがくるくるいろんな役を演じながら物語(旅)が進んで行くんです。それを観ながら改めて役者さんて凄いなぁと。 あとカトケンさんのあのスカーフは物語にかなりインパクト与えるアイテム… https://t.co/Ayu4xBjaYs
約3年前
今から、加藤健一事務所『叔母との旅』を見まーす。 老若男女24役を出演者4人で演じ分けるそうです。 【出演者】 加藤健一 天宮 良 清水明彦(文学座) 加藤義宗 https://t.co/fh8LVsFHGk
約3年前
羽世保でお世話になった雨宮良さんが出演されている舞台「叔母との旅」を観劇してきました。 今までに見た事ないスタイルのお芝居で面白かったです! つくづく役者さんってスゴいなぁと思う。 https://t.co/VKSdSGcKDq
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」。4人の俳優が何役も掛け持ち、ときには1人の人物を複数で表現するのだが、一瞬で役を切り替える場面が次々に出てくるうえ、話の展開も想像の遥か斜め上を行き、満腹感たっぷり。 https://t.co/TlKz5vSJLD #theatre #play
約3年前
加藤健一事務所『叔母との旅』@サンシャイン劇場。同名で2010年に青山円形劇場を使ったシス・カンパニー公演を観そびれてから機会がなかったので楽しみにしてた。グレアム・グリーンの原作では、24人の役を4人で演じわけることも、一つの役… https://t.co/tHkyzCPaqg
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」老若男女の登場人物合わせて24人と1匹を4人の男優で演じ切るユニークな構成。しかも主人公ヘンリーは全員が入れ替わり立ち替わり演じるし、今まで人物Aだったのがクルッと一回転して人物Bになって喋るとか。叔母… https://t.co/bgW6CTAkTm
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」グレアム・グリーンの同名小説を戯曲化した作品。よくできてる❗️面白い‼️勤勉実直なヘンリーと破天荒な人生を送ってきた叔母とのサスペンス味のある旅(ヨーロッパ〜トルコ〜南米)なんだけど、家族や男女の絆の物… https://t.co/NWu6o2BZ5G
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」 サンシャイン劇場 膨大な台詞量の翻訳劇に加えて4人で24役!同じ人物も場面や台詞で演者がコロコロ変わって話が進みます。 主人公が旅を通して自己発見するというより共犯者になっていくような不思議な感覚に陥… https://t.co/jnI8EQixxm
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」 2日目まもなく開演! 旅のドキドキを彷彿とさせる表紙の公演パンフ(トランク素敵) 伊神しゃんが「足を休めて」ってくれためぐリズム(私、袖の中で階段の登り下りが何回もある) 旦那作のパンに旦那作の… https://t.co/xWD4fRbytr
約3年前
今まで観たことのないお芝居です。舞台ならではの展開、不思議な旅が体験できます。加藤健一事務所"叔母との旅"オススメです😊✨✨✨ ちなみにサンシャイン劇場はわかりづらかったので、初めての方は早めに着くようにした方がいいと思います😃
約3年前
加藤健一事務所『叔母との旅』初日@サンシャイン劇場、観劇 ある日突然始まる、叔母との波瀾万丈の旅。人生の旅。4人芝居だけども、24人の登場人物を全員で演じるとともに、主人公のヘンリーも全員で演じる。丁寧で華やか。演出は鵜山仁さん。… https://t.co/lHaPpelPiW
約3年前
加藤健一事務所『叔母との旅』の初日を観劇。 複数の登場人物を4人の役者が入れ代わり立ち代わり演ずる演出。飲み込めてしまえば全然気にならない。ちょっとした仕草で役が変わってみえるのは凄いなぁ~。叔母さんだけはカトケンだったね(笑)… https://t.co/KmwRJRVftm
約3年前
加藤健一事務所「叔母との旅」初日観劇。キャストほ男性4人のみ。セリフの量と役代わりの多さに圧倒される。大変だろうなぁと思いつつ、演劇だからこそ成立つところが面白いし楽しい。 https://t.co/ILTxiHpauA
約3年前
★開幕初日おめでとうございます★ 加藤健一事務所『叔母との旅』 劇場:池袋・サンシャイン劇場 期間:2021年11月22日(月)~28日(日) ※12/4に京都、12/11に所沢公演もあり! 公演詳細→… https://t.co/2qHQE8x0De
約3年前
<ゆる募>加藤健一事務所「叔母との旅」@ サンシャイン劇場 11月23日(火・祝)14時開演 1階6列センターブロック2連番 お値引きします。どなたかいかがでしょう。この日は都合が悪くなり行かれなくなりました。(自分の分は速攻再手配済み) ご興味ある方はDMください!
約3年前
水先案内人 大島幸久がセレクト いま、最高の一本 加藤健一事務所『叔母との旅』 「そこにはユーモアとペーソス、さらに不正や冷酷さも描かれる。一筋縄ではいかない展開だ。」 https://t.co/Pxx0X0HfAe #叔母との旅 #加藤健一事務所 #ぴあアプリ #ぴあステージ
約3年前