実演鑑賞
『オズマ隊長』『尺には尺を』に伺えなかったので、どうしても観ておこうと思った新国立劇場演劇研修所第14期生修了公演(宮田慶子演出)。栗山民也さんの演出と比較しつつ拝見しました。『マニラ瑞穂記』は2022年9月に文学座で松本祐子さんが演出されますね。
https://shinobutakano.com/2021/02/27/17822/
満足度★★★★
前半でまず状況と人物を立ち上げて、後半になって事件が次々起きて面白くなる。フィリピン独立派がアメリカ軍に敗れた1898年のマニラが、戦後の焼け野原の東京と重なるようなセリフがある。「日本人は熱狂するのが好きで、言葉に酔いやすい」「金だけじゃない、文化も何もかも敗れたんだ」等と。若いアメリカ兵にすがる日本人女性など、戦後のパンパンを思わない人はいないだろう。
第三場の領事館に場面変わって、さらに舞台の深みがます。カラユキさんの女性5人のなかに二人、男性登場人物と片思い関係にあるところなど、「かもめ」っぽい。前半ではその気配がなかったが、男女の出る芝居なんだから当然恋が芽生えなければ。ただあまりロマンスが膨らまず、それぞれ袖にされるのはもったいない。
女衒の秋岡(田畑祐馬)を、独立派義勇兵の梶川(今井公平)がアメリカ軍に密告する。梶川は女たちに「あんたたちは奴隷にされているんだ。さあ、逃げろ。自由になるんだ」とけしかけるが、逆に女たちは秋岡といっしょにいることを選ぶ。家族からも社会からも見捨てられた自分たちが、頼りになるのはこの男だけというわけである。この人間感情の複雑さが薄っぺらな正義を跳ね返すところが面白い。
さらに中尉と決闘して勝った秋岡が「自分は生まれ変わる。お前たちはどこでも行け」というのに対し、女たちが「私たちは仲間じゃ」「自分だけ人間のつもりだったのか「裏切りもんは突き飛ばせ、売り飛ばせ」と攻め立てる。ここでは先の秋岡頼りからさらに女衒と女たちの関係を深く掘り下げて、男が女に縛られている構図を浮かび上がらせる。女衒と女たちの共依存というべきか。
秋岡が決闘の時に「なん百何戦の女たちの声が聞こえる」と言っていたが、この5人の女が責めさいなむ声こそ、秋岡の頭の中でなっていたものが現前したものだろう。
劇場で旧知の俳優が「ああいう女衒や女たちを国家が利用しながら、踏みつぶしていったことを、秋元は見据えて書いている」と語っていた。そういうこともあるかもしれない。
女優陣がしり上がりによくなっていったのに圧倒された。のんだくれのいち(伊藤麗)がよかった。秋岡の薩摩弁(?)も見事。ただ、客席の第一列で見たせいか、男優たちは声が概して大きすぎてせりふ回しが固いように感じた。感情よりも理屈をいろいろ考えさせられた芝居だった。前半60分、休憩20分、後半80分。合計2時間40分
満足度★★★★
戯曲には運・不運があるとつくづく思う。あまり上演されない、いい作品を見た。
秋元松代の「マニラ瑞穂記」は、64年の「ぶどうのの会」の初演。「村岡伊平次伝」の続編のような作品だが、ほとんど再演されていない。前の芸術監督の栗山民也演出でここで再演(2014)されたときも珍しいものをやると思った記憶があるが、結局見なかった。今回はこの劇場の研修生の卒業公演で、研修所長を務めた宮田慶子の演出である。
感想をいくつか。
改めて、秋元松代の戯曲のち密さにおそれいった。この作者の場合は、演出を兼ねる事がなかったために戯曲に全力投入されている、内容はもちろんだが、場割の構成から、登場人物のキャラ、セリフ、俳優の出ハケ、まで考え抜かれている。
日本帝国主義の拡大期を舞台にしているが、南方を舞台にした作品は珍しい。時は20世紀にはいる直前、アメリカの統治時代になろうとするころのマニラ日本領事館が舞台である。スペインからアメリカへ、その争いの中で独立運動や割って入ろうとする日本の思惑など、歴史的にもなじみのない背景が、あまり説明セリフがないのによくわかる。登場人物は日本領事館の領事や駐在武官と、内乱を畏れて逃げ込んできた南方進出の女衒と女たち。上部構造と下部構造。約二十人の登場人物が巧みにかき分けられて、研修のテキストにはもってこいの本である。だが、それだけではない、今見ると、南洋に売られた日本の女性たちが、男どもの小賢しい政治を乗り越えていく逞しさが心に残る。さすが、日本の女性劇作家の先陣を率いた作家である。向こう気の強い作家だったから、当時、ぶどうの会のみならず、日本演劇界の精神的支柱であった劇作家木下順二への対抗心が内心あったかもしれない(ただの個人的推測だが)。劇がしなやかで強い。
演出の宮田慶子にとっては自分の生徒たちの門出の公演なのだが、昔の宮田演出らしい、優しいタッチだ。生徒たちもそれぞれ持ち味を引き出されてのびのびとやっている。この研修所は全国から俊英集う演劇の東大みたいなところ、と聞いているが、なるほど、皆うまい。普通、こういう卒業公演だと、幾人かの力不足があからさまに出てしまうのは、やむを得ない、となるのだが、一人もいない。これも恐れ入ったところで、もう、どこでも使えそうだ。俳優は経験が大事で、研修所は囲い込む必要もないのだから、これから、積極的にいろいろな舞台で見てきたいものだ。
舞台は、卒業公演と言えないような本格的な舞台作りで、装置、音響、それぞれお金もかかっていて、観客もこの料金では贅沢に芝居を見物できた。
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新国立劇場研修所14期生の修了公演「マニラ瑞穂記」初日を観劇する。昨日24日が千秋楽。このメンバーでの舞台はこれで見納め、感慨深い公演でした。お疲れ様です。卒業までの間、まだまだ就活が残っています。これからの仕事の場を探さなければなりません。がんばって!!!
3年以上前
修了公演「マニラ瑞穂記」 全公演終わりました🎌 言葉に出来ない思いがたくさん。 この公演に関わってくださった、 スタッフ、15・16期の皆、共演してくださった先輩方、そしてなにより14期の皆へ感謝です。 「平戸健三」くん、ま… https://t.co/9XXOGvsspG
3年以上前
新国立劇場演劇研修所修了公演「マニラ瑞穂記」を新国立劇場で拝見しました。 14期生の皆さんの素直で初々しい演技に感動! これからたくさん活躍して欲しいです。 本日、千穐楽! おめでとうございました! https://t.co/q9RZL22S0t
3年以上前
新国立劇場演劇研究所第14期生修了公演「マニラ瑞穂記」を観劇。 方言だらけで演技の良し悪しの判断がつきにくい。。。 向かう途中でブログを更新! https://t.co/yK12AzTYHd
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期生修了公演『マニラ瑞穂記』@新国立劇場小劇場を観た。明治の半ばに独立運動で揺れるフィリピンで生きる日本人たちを描いた作品。他であまり見られない設定で明治維新の余韻を残す中で独立運動に活路を見出す若き志士… https://t.co/ID0vJk758V
3年以上前
【マニラ瑞穂記】明日で最終公演となります、修了公演「マニラ瑞穂記」。Web上にてアンケートを行っております。ぜひ、みなさまのご感想をお寄せください!→https://t.co/XHwyxfD2Lb https://t.co/fhe31G9UNf
3年以上前
先日、新国立劇場演劇研修所修了公演「マニラ瑞穂記」観に行ってきました。 息苦しくなるような手強い戯曲。修了公演だからこそ、今の時代だからこそ、若者たちだからこそやる意味のある演目。 客席やロビーで見知った顔にも会えました、次の再… https://t.co/kX1p0LWwKd
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期修了公演「マニラ瑞穂記」終了。前回の新国立劇場での公演も観てます。でも今回の方がわかりやすい演出でした。人間の業とか純粋さとかがごった煮になった脚本なんだなと。そして作家いわく「夢に浮かされやすい日本人」という言葉が胸に刺さったりも。
3年以上前
【PR】チケットぴあ 一般発売@/新国立劇場演劇研修所第14期生 修了公演『マニラ瑞穂記』 2021/2/19(金)~2/24(水)新国立劇場 小劇場 東京都 販売~2/24(水)14:00 https://t.co/8gaLu5wwy2
3年以上前
新国立劇場演劇研修所14期生修了公演「マニラ瑞穂記」観てきました😊 修了生の一人一人が四苦八苦、悪戦苦闘してキャラクターを作り上げていったのだろう。 他人を演じる、ってこういうことだよなぁ。 後輩の修了公演を見るたびに、自分も原点に戻れる感じがして、一年に一回のお得な機会だ。
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期生 修了公演「マニラ瑞穂記」 観てきました🙂 以前お仕事で共演させて頂いた「怪物」と観劇した「尺には尺を」と今回で、見るのは3回目! 惹き込まれました😌 もはや彼らのファンですね☺️笑 大変な情勢の中尽… https://t.co/UFeYEy3ncR
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期生修了公演『マニラ瑞穂記』観てきました。 招待ではなく普通にチケット代払って観るからもしつまらなかったら酷評しても大丈夫だな!と思ってましたがちゃんと面白かったです笑 それにしてもチェーホフとかイプセン… https://t.co/HBoQv0zigv
3年以上前
そういえば、新国立の修了公演「マニラ瑞穂記」やってるんだ。。 めちゃくちゃ充実した栗山さんの稽古だったし、作品はもちろん、やらせて頂いた古賀中尉、ほんと好きだったなあ。生涯5本の指に入るかも知れない。
3年以上前
新国立劇場演劇研修所『マニラ瑞穂記』 https://t.co/QSlxhGSTVL @YouTubeより 1898年の在マニラ日本領事館。からゆきさんや志士が領事館に避難。そこに、女衒の秋岡伝次郎(田畑祐馬)が来る。
3年以上前
新国立演劇研修所14期修了公演 「マニラ瑞穂記」観劇。 14期生とは1年前に共演しているので感慨深い。。。 2/24の千穐楽まで頑張って下さい🤲 https://t.co/uXv5ixiaPz
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期生修了公演『マニラ瑞穂記』を観に来ました。教え子たちの卒業前最後の舞台。そして秋元松代先生の本。初めて観るので楽しみです。 https://t.co/FH45OKic78
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期生 修了公演 『マニラ瑞穂記』嫌いな脚本ではないけど、意外性もなく淡々と進んでいく感じで、女性陣の使い方が上手そうな方が多いのに勿体なかったな。渡邊清楓さんとか特に。印象に残り、また観てみたいのは大西 遵さん、五十嵐遥佳さん、加部 茜さん辺りかなぁ。
3年以上前
新国立劇場演劇研修所修了公演『マニラ瑞穂記』宮田慶子さん演出、観てきた!! 重厚で、立場思想の異なる人々の群集劇というとても好みな芝居だった!! 満足ホクホク〜
3年以上前
修了公演『マニラ瑞穂記』に関しまして、 明日、2月20日(土)14:00開演の公演は、 当日券(Z席を含む)の販売はございません。 キャンセル待ちもございません。 あらかじめご了承ください。 https://t.co/BRuHTniUS2
3年以上前
演劇研修所第14期生の修了公演となる『マニラ瑞穂記』(宮田慶子演出)が本日初日を迎えました。 研修生活3年間の集大成となる14期生の修了公演『マニラ瑞穂記』にご期待ください。 詳しくはこちらをご覧ください。… https://t.co/xnJk7KIChN
3年以上前
【🎊本日開幕🎊】 新国立劇場演劇研修所 第14期生修了公演 『マニラ瑞穂記』 <出演> 五十嵐遥佳 伊藤麗 加部茜 星初音 前田夏実 渡邊清楓 今井公平 大西遵 佐藤勇輝 田畑祐馬 仁木祥太郎 濵田千弥 堀元宗一朗 中西良介… https://t.co/LEgBWlOdV4
3年以上前
【✨完売御礼👏✨】 いよいよ明日初日の14期生修了公演『マニラ瑞穂記』 我々15期は今回もスタッフとして参加させていただいています! 個人的には後半のあるシーンで、あの人があの彼にサッと見せる粋なやりとりが好きです。 観に来ら… https://t.co/TzIK8TyGyh
3年以上前
修了公演『マニラ瑞穂記』に関しまして、 明日、2月19日(金)17:00開演の公演は、 当日券(Z席を含む)の販売はございません。 キャンセル待ちもございません。 あらかじめご了承ください。… https://t.co/PriYuf8bma
3年以上前
【PR】チケットぴあ 一般発売@/新国立劇場演劇研修所第14期生 修了公演 『マニラ瑞穂記』2021/2/19(金)~2021/2/24(水)新国立劇場 小劇場東京都 販売~2021/2/24(水) 14:00 https://t.co/1XGmpUlfV8
3年以上前
新国立劇場演劇研修所第14期生の修了公演「マニラ瑞穂記」の初日を観劇するために予約を入れる。 みんな元気にやっているのでしょうか? 凹んでる人はいるのでしょうか? とにかく、初日まであと10日もある。修了の公演を楽しみに観に行きます。
4年弱前