満足度★★★★
二年前に岸田戯曲賞を受賞した上里雄大の新作の公演・客席50ほど(満席)の横浜のビル地下の狭いスペースでの上演である。長い年月をかけて練り上げられた昨年の受賞作「バルパライソの長い坂をくだる話」に比べると、こちらはエッセーの味。それでも、天皇の血で琵琶湖が真っ赤になる、とか外来魚のブルーギルが人間の勝手を訴えるとか、それぞれ、ふつうの演劇の舞台ではなかなか観客に納得させるのが難しいところを、ホリゾントの黄色と朱の幕(この色彩感覚は大したものだ)で表現してしまうとか、異様ともいえるブルーギルの着ぐるみ(衣装デザイン秀抜)の女優(重実紗果)の快演でみせてしまうとか、思い切った演出があって芝居好きは嵌められてしまう。
エッセーの趣旨は、作者が国境横断派ということもあって、琵琶湖で外来種として駆除されるブルーギルの命に託して、現在問題になっている外国人労働者をはじめとする開放化に対する日本の無意味で不思議な閉鎖性への多角的な批判、ということだろうが、作者の意図に反して、そのような内容より、舞台の仕組みが面白い。
舞台は三場に分かれていてそれぞれ約30分。一場(夜更け)は、竹生島に夜釣に出かける湖岸の過疎の村の老人と娘が島で神に会う話、二場(夜明け)。は、外来魚として排除されるブルーギルの訴え。三場(曇り空)は鎮魂の神の舞.で、一場と二場の間に10分の休憩がある。ここで、横浜ということもあって、観客にシュウマイ弁当やスナック、お茶を売る。もぐもぐしながら気軽に見てくださいという趣旨と説明されるが舞台の方が広いスペースで壁際に押しつけられて見ている観客はとてもそんな気分になれない。が、「バルパライソ」でも大きな船のデッキの客席を組んで、観客を取り込もうとした作者の意図はよくわかる。観客は、読むかどうかっ分からないアンケートを書かされたり、次回公演の広告をもらったり、突然舞台から賛否の声を上げるのを強制される観客参加には心底うんざりしているのだ。
俳優は三人。柄が役にあっているうえに、ダンスもやっているらしく、動きがきれいで無駄がない。巫女の役を演じる浦田すみれはまだあまり経験はないようだが、こういう役を演じられる貴重な年齢にも恵まれた。受けの諸役を演じる男優の嶋田好孝も、相手をよく見て演じている。舞台が狭いという条件もあるが、動きと衣装がち密に計算されている。能のワキだ。
平らなギターのような木切れにモニターを張り付けたような持道具が登場して、モニターの部分にはその楽器を弾く手元が鮮明に映し出される。音は、琵琶で、この楽器の伝来と三線としてのこの国での普及が語られる。また、終盤では「琵琶湖周遊の歌」が聞こえるともなく聞こえてくる。論理的な起承転結でなく、埋め込まれた民族の記憶の断片が立ち上がってくる。こういうところがうまい。
最期に内容になるのは本末転倒だが、この舞台や、松原俊太郎、岡田利規などの新しい演劇を作ろうとしている人たちには、既成のリアリズムに対する根強い不信がある。セリフによる戯曲、現実べったりの俳優演技のリアリズム、劇場の仕掛け、そこをウザイ、似非だと、否定するところから彼らの演劇は始まっている。岡崎芸術座の舞台は、地点よりも、木下歌舞伎よりも、前衛的だが、スッと観客の心に入ってくるところがある。これからの演劇を純粋な形で見せているのかな、とも思う。
満足度★★★★
STスポットの狭い空間にはパフォーマンスエリアが大きく取られ、その片隅に申し訳程度の客席が割合スシ詰めで30席程度か。
このユニットの初見が数年前、横浜での殆ど取り付く島のない抽象舞台であったが、その風景を彷彿させた。ただし今回のは面白い。自分の感覚が耕されたのか..、しかし作り手の「問い」がより普遍的か否か(普遍的表現に昇華されているか)も大きな要素のはず。
言語化して伝える材料が見出しづらいが、四角の台上の世界はある種の箱庭。愛着を感じる。そう言えば初見舞台にもあった宙に浮かぶ大きな球体が、場面によって色を変えて幻想的に光っている。もう一つ魅力的なアイテム、弦楽器は三つの伝統的な楽器を兼ね備える(これ如何に)。
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神里雄大/岡崎藝術座「ニオノウミにて」 釣りの?ヘッドライトをつけた人が見てる場所≒頭の方向が照らされるでも本人が光源だからその人は逆に表情あんま見えない iPad画面の動画と体が続いて見えたりやっぱ無理だったりの動かなくてもの度毎の着脱?が毎度起こる
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』のチラシにあった神里雄大の言葉がとても印象的だった。 「複雑に絡むそれぞれのトピックは立場のちがいを際立たせて、対立するか無視し合うか先はない、みたいな感じがして、こわかった。」 まさに対立するか無… https://t.co/H1vTQxtdF4
5年弱前
さらに前には岡崎藝術座『ニオノウミにて』観ました。シュウマイとおにぎり食べながら観ました。題材とその展開が大好きでした。非常に楽しい経験でした。 https://t.co/rCvSbTLlSc
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』続、伝説の紡ぎ方や表現の様々な工夫を面白く感じたし、演じる役者達の強さやぶれなさや場とのバランス感覚にも見入る。休憩時に購入のシュウマイの味も場の厚みに翻る。衣装や台詞、所作や美術も強かに作られ、その彩… https://t.co/uAp5PUvGbu
5年弱前
17日夜にSTスポットで岡崎藝術座『ニオノウミにて』、語り口には遊び心というか恣意的なルーズさも感じるけれど、そうでなければ居場所が無く馴染まない今のありようや寓意が様々に織り込まれていた。終わってみれば、漫然と生きる現代の、見え… https://t.co/02WShDxZiC
5年弱前
ニオノウミにて、とても良かった。小劇場で見る演劇は、形式から考えられている作品に心を動かされるなぁと実感。独特な時間の流れ方によって、自然と舞台上の人の話を聞いて、考えようという気持ちになる。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』。「他者との共生」と「生態系破壊」を結びつける!そこに天皇家(ブルーギルを日本に持ち込み、ティラピアをタイに持ち出し、高麗神社に詣でるアキヒト)を挟んで!これはヤバい!ダブルバインド必至。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』を水曜日に見た話を書きたいと思っています、
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』@ STスポット、観た。ストレンジャー的存在の重なり。人間、生物、歴史と現在。男の、最後のセリフが染みた。
5年弱前
2020/ 1/11 ・円盤に乗る派 かっこいいバージョン「おはようクラブ」吉祥寺シアター 1/12 ・ポン・ジュノ「パラサイト 半地下の家族」kino cinema 横浜みなとみらい ・神里雄大/岡崎藝術座「ニオノウミにて」ST… https://t.co/q26hS6g5xB
5年弱前
『ニオノウミにて』見れなかった・・再演もとむ・・
5年弱前
『ニオノウミにて』観た。やっぱね、STspotで『+51 アビアシオン,サンボルハ 』を観て沼に嵌り無茶苦茶になった身としてはね、STで岡崎藝術座となったらさ、楽しくて仕方がないんだよね。(天皇を在来種と外来種の相互に重ねて磁場が… https://t.co/YuZ6A5NGow
5年弱前
【当日券情報】『ニオノウミにて』横浜公演、19日がいよいよ千秋楽!当日券はキャンセル待ちとなります。お求めご希望の方は、予めご了承の上、ご来場いただければと思います。
5年弱前
横浜で、岡崎藝術座「ニオノウミにて」。月曜に体調不良でチケット代を無駄にした琵琶湖へ当日券でリベンジ。淋しい外来魚。で、躊躇した瞬間に、シュウマイは完売しちゃって食べられず。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』。「天皇制」と「移民」と言うことばはあえて避けよう。 多層に重ねられたものへの「他者」からの不意撃ち。
5年弱前
岡崎芸術座「ニオノウミにて』を観に行きました。まず「これめっちゃ能やん」と観てる時思って、それからだんだん引き込まれていく感じ。最後のシーンとか能だからこその面白さが良く出ていた印象でした。 あと楽器の紹介で楽器の説明をしているのだけどただ説明をしているだけなのにすごく良かった。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』いつになくと言うか、いつもにまして政治的なテーマが前面に出てるという印象だったのだけど、感想まとめを見てると、意外とそこに触れてる人が少ないのが気になった
5年弱前
STスポットにて岡崎芸術座『ニオノウミにて』。京都の初演は逃したので初見。ラストの梯子外しが強烈にアイロニカルで、却って神里雄大の義憤と怒りを感じた。一見シンプルでざっくりした作りだが、極めて多様な意味性が込められていて、戯曲を読みたいと思ったら売ってました。俳優の演技態も独特。
5年弱前
ニオノウミにて@ stスポット版。京都ではバルパライソの南米的な広場がぴったりなサイズと奥行きだったけど、ある種の日本人大衆論でもある本作は、stくらいのギュッした密度、舞台との近さがちょうどいい。大衆演劇(の場)感。あまりに腰砕けな日本(人)像はしょぼさにおいてただただリアル。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』STスポット 誰もいない島で遊びましょうとじじいと琵琶湖へ舟で乗り出だす。魚の精が舞いお宝をみせてくれる。そんな誘惑に勝てるのか?途中売り子が弁当を売りに来る屋形船気分。 https://t.co/sVr9FQ5DAn
5年弱前
そういえばソノノチ「たちまちの流」観ながら岡崎藝術座「ニオノウミにて」を思い出してた。芸センのフリースペースの豊かさを考えてた。
5年弱前
岡崎藝術座「ニオノウミにて」を観ました。 崎陽軒のシュウマイ食べながら観たのが絶良かった。世の中の演劇の大半は食べながら見た方が幸せな気持ちになれるんじゃないかな。
5年弱前
【当日券情報】『ニオノウミにて』横浜公演、本日18日14時開演、19時開演の回ともに、当日券は若干枚数の販売となります。販売は開演の30分前より行います。ご来場をお待ちしております。
5年弱前
ニオノウミにて とても良かったというのか自分の好みにあってたというのか 俳優含めた舞台美術や衣装のビジュアルもすごくよかった 音楽もその奏で方も かっこいい能だった… 実際に観ないとわからないと思いますが…
5年弱前
ニオノウミにて すごくよかったというのか自分の好みだったというのか 俳優含めた舞台や衣装のビジュアルもいいし音楽もいいし かっこいい能だった 観ないとわからないと思いますが…
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』。舞台芸術の適切なサイズ感、省略してもよい身振りなどについて考えさせられながら観た🎣
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』前提知識をまったく持たなかったことがかえってよかったのか、気楽に観られた。頭につけたライトが間接的に視線の動きを表現してるの、シンプルだけどいい。楽器の伝来と外来種。スパンコールの鱗を逆立てる
5年弱前
【当日券情報】『ニオノウミにて』横浜公演、本日1月17日19時半開演の回は、若干枚数の販売となります。販売開始は19時~です。お早めにご来場くださいませ。 また、土日に鑑賞をご検討のお客様は、前売りチケットがあるうちの事前予約をお… https://t.co/tLz40bWLou
5年弱前
残すところ4ステージで千秋楽も近づいてまいりましたが、横浜公演直前にFacebookに掲載した、『ニオノウミにて』横浜公演 神里雄大によるQ&Aをご紹介。 Q.本作の見どころは?→シンプルで凛とした舞台、冗談のようなかわいい衣装、… https://t.co/5VW6kS9Jv3
5年弱前
岡崎藝術座、ニオノウミにて。神里さん、以前、脚についてのWSやってた気が。スズキトレーニングメソッドだったのか?今回、より顕わになったと思う能楽性との関係を想う。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』見たい・・。しかもシュウマイ食べながら見れるらしい・・!
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』続き。前作『バルパライソ』再演で、言葉のしての応酬のない会話劇を物凄い圧縮度で完成させた神里雄大が、この作品では『竹生島』という能の構造とストーリーを借りて、数種類の「語り」を並行させ、それが会話として成立することを証明する。3人の俳優の新鮮さが良い。
5年弱前
STスポットで、岡崎藝術座『ニオノウミにて』。かなり良かった。目に焼きつくような、鮮烈な印象を与えるシーン多数。「凄い長いモノローグを言ってる俳優がいるときに他の俳優は何してればいいのか問題」ってあると思うのだけど、沈黙している俳… https://t.co/2CL4JNzHqm
5年弱前
岡崎藝術座、ニオノウミにて、来た。すまないが腰が痛くなる予測なので優先席(電車のと同じマークよ)に座らせていただく…譲る気持ちはある…
5年弱前
【『ニオノウミにて』感想まとめ】更新しています!https://t.co/tzALEVRGpX 土日の横浜は、電車も街も劇場内も混み合うことが予想されますので、今日・明日のご来場がおススメです!ご予約お急ぎください。
5年弱前
【NEWS】 神里雄大/岡崎藝術座の『ニオノウミにて』は、横浜のSTスポットで19日まで公演しております。美術制作部は、制作アシスタントを担当しています。お誘い合せの上、皆さまのご来場お待ちしております!当日券など最新情報はこちら… https://t.co/FnieSi21MS
5年弱前
【当日券情報】『ニオノウミにて』横浜公演、本日19時半開演の回は当日券を販売いたします。開演30分前の19時より販売です。ご来場をお待ちしております。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』 能の「竹生島」をモチーフに今の日本の話…といっても喩で満ち満ちていて、もう神話的な枠組と琵琶湖の生態系と外国人の厳しい労働がひとつになるという離れ技 なにか身につまされるおもしろさは、休憩時間に食べた… https://t.co/PT50PpyTTS
5年弱前
岡崎藝術座、ニオノウミにて。琵琶湖が舞台。神話をベースに外来種の魚や楽器の琵琶の話を組み合わせた不思議な世界。照明、楽器、社など簡素で工夫豊かな小道具、魚を纏う独特の衣装など一体となって神話の雰囲気を盛り立てる。終わってみれば初詣の余韻が残るこの時期にピッタリの観劇体験。
5年弱前
ちゃんと感想を書く時間がなく、チケットの有無もわからないけど、岡崎藝術座『ニオノウミにて』とてもとても良かった。最近の作品とは異なるアプローチで、でも、この世界はもはや人も文化もハイブリッドしかなく、それは移動によって生まれているという神里雄大の考えがすっと伝わる。移動と交流。
5年弱前
岡崎藝術座『ニオノウミにて』@STspot。本作がモチーフとしている能の『竹生島』は宗教劇なんだな。
5年弱前
『ニオノウミにて』横浜公演、本日19時半開演の回、当日券はキャンセル待ちとなります。 ご来場予定の方、予めご了承の上ご来場ください。明日以降の前売りチケットはまだありますので、ぜひこちらからhttps://t.co/ln8fAwH0t0
5年弱前
京都芸術センターにて初演した『ニオノウミにて』、那覇公演を経て、ついに横浜公演です!少し期間を開け、観た方も増えてきて、どう変化しているのか気になります。 岡崎藝術座の新しい不思議な世界をお見逃しなく!(シウマイ+銀シャリもそそり… https://t.co/9iDeEvcQVR
5年弱前