満足度★★★★
つかこうへいの代表作を味わいたく久々の女性(nyosho)の館・Project Nyxへ。場違い感に抗う構えで、芝居砦・満天星をこちらも久々に訪れたが、小屋の佇まいも何時からか仮住まいを脱して年季の入った喫茶店のようにひっそりとながら図太い存在感を醸していた。
梁山泊で主役級を10年ばかり?やった申大樹が此度は演出(監修に金守珍がしっかり付いてるとは言え)という事で密かに期待を膨らませて開演を待った。パンフによれば北区つか劇団に所属歴があり、念願であったという。
主役を務めた傳田圭菜は彼女の新宿梁山泊(ほぼ)デビューの舞台で役者名を連呼する金守珍の甲高い声の中でその風変りな名前の響きと、初々しく緊張した顔とで記憶にたまたま残り続けた女優だったが、劇団にもしぶとく居続け、近年妖しく開花。今舞台ではスター・システム批判もしなる脚で蹴散らし、堂々たる主役振りを見せた。終演後は礼賛礼賛の拍手。
とは言え、作劇(翻案)と、その演技には難渋の跡も見られ、テキストとしては原作をちゃんと読んでみたく思った(つか氏は「原作」などクソ食らえと言いそうだが)。昨夏の燐光群版は坂手洋二流の翻案は織り込み済みであったが、こちらも加筆されたらしい朝鮮半島絡みの逸話の比重が嵩み、脇筋が膨らむ感じも坂手並みの感あり。
・・もっとも「原作」知らないから何とも、だが。
手の内の多くなく、恐らくは没入型演技の不得意な(今回見ていてそう思った)傳田女史が、女史なりに勢いでもって(滑りそうになりながらも)快調に場面を乗り切って行く様は何とも痛快。台詞が要請する伏線が辿れているとは言えない箇所は多々あったが(演出の問題かも知れない)、登場人物ら及び観客の「期待」を一身に背負って風を切る傳田自身の姿をいつしか観客は追い、終局に至って初めて彼女(傳田女史もしくは木村伝兵衛)が「弱さ」を垣間見せるが、そこから歩み出す後姿は美しく、伏線回収不十分を補って余る力強さがあった。つか舞台は、役者を酷使し、輝かせる仕掛けである(現時点の仮説)。
満足度★★★★★
鑑賞日2019/12/02 (月) 19:00
座席1階
つかこうへいの名作をプロジェクト・ニクスがアレンジ。満天星で上演するにふさわしい物語と演出に仕上がった。
女性劇団のニクスだから、主役の木村伝兵衛物語女性の部長刑事ということになる。スレンダーで長い脚が大股開きになったりするのはご愛敬だが、木村を演じた傳田圭菜は一人二役。それは見てのお楽しみだ。
新宿梁山泊の金守珍の監修。容疑者大山金太郎は長崎・五島列島から殺されたアイ子を追って出てくる設定になっている。なぜ、大山はアイ子を殺したのか。ここにも梁山泊らしい筋立てとなっていて、硬派な舞台に昇華している。
詳しくはネタバレするので省くが、五島列島は朝鮮半島に近い。熱海殺人事件という縦糸に、在日朝鮮人の悲痛な思いを横糸にして編み上げた、見事な舞台だ。
これは、冒頭からアリランの女たちが美しい踊りを繰り広げるという演出にも表れる。ニクスを率いる水嶋カンナがどんな役で登場するのかももう一つの見どころだ。