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カテゴリ:オーディション告知 返信(2) 閲覧(1410) 2018/09/30 10:55
上記のストーリーデッサンです。
こんな感じの物語です。
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◆ストーリーデッサン
12月。栃木県真岡市。鉄道で高校から帰る。
彼女のかじかんだ頬は赤く。濃紺のセーラーについた白いマフラーの毛を払う。寒月の光が川面に揺れる。小さな寺の門をくぐると保育園がある。ローファーの踵が石畳を打つ。旅館に客はおらず、花街のぼんぼりも寂しげに燃える。脱ぎ捨てた靴下に蜘蛛が這う。
それが彼女の最後の日だった。
10年が経った。
ぼくは不倫をしていて、恋人のアパートでクリスマスを過ごしている。安っぽいレモン色のブラジャーを見ている。国道では暴走族がマフラーの咆哮を轟かせている。シーフードドリアが溶岩のように熱かった洋食屋は今年いっぱいで閉店する。雪が降りそうな埃っぽい匂いが網戸から流れ込んできた。
白い呼吸と缶ビール。
ぼくはパジャマのままアパートを後にする。
なにもかもなにもかもクソったれ。なにもかもクソったれだ。
会いたいよ。
一晩中待っています。
目印を伝えておきます。
潰れたスケートリンクの駐車場で鉄パイプを持っているのが俺です。
この街の連中は、みんなほっぺが赤い。それがイライラするんだ馬鹿野郎。
あの頃醒めた目をしながら街を憎んでた少年少女は、誰一人として何者にもなれなかった。
退屈な中年にさえなれなかった。
まだ熱いんだ。熱くて苦しいんだ。だから笑うんだ。笑うから痛むんだ。愛が肺を傷つけるんだ。これが僕達の真冬の火傷なんだ。
さよならばかりの人生に爆音のアクセルコール。
直管マフラーのエギゾーストが俺たちの国歌。
天使になっちまったすべてのヤツらに捧ぐ、ヤンキーと祝福の物語。
年の瀬の忙しい狂騒と祝祭。ギミックなしの青春群像劇。
キコ/qui-co. 「十二月の蜘蛛と火曜日のオルガン」
メンバー一同心よりお待ちしております。
キーワードは90年代。
グランジ、オルタナ、ポストロック。
都市はバブル崩壊をものともせずに再開発を始めるけれども圧倒的な建築ラッシュに派比例死て街は活気を失っていく。
昭和の香りは残滓としてそこに息づき、サブカルチャーだけが花開いた。
オリコンヒットチャートは肥大化していったけどぼくたちとは無関係だった。
北関東の若者にはオートバイのコール音が最高のミュージックだった。
なんにもねぇ。だけど全部、そこにあった。
あれから20年経って俺たちはおっさんになった。ばばぁになった。
結婚をした。家を買った。職を失くした。親が病んだ。従姉妹が死んだ。離婚をした。
ラーメンが大盛りじゃなくなった。夜中にロックンロールをきかなくなった。
子供が死んだ。酒の量が増えた。ダチのツレが大麻でパクられた。
ゲームセンターがなくなった。日が暮れた。年末だ。ひとりで土手、焚き火をしている。
材木屋のツネがガムを噛みながらやってくる。クズの材木を火にくべながらたまには生き残った皆で集まらねぇかって、誘ってくる。俺は煙草をすすめる。ツネは煙草をやめたんだって。
なんだか俺は絶望してツネをボコボコにしたよ。ツネは燃えた材木を振り回して俺に反撃してきたよ。結局はどういう経緯か軽トラごと川に落ちて警察に連れて行かれた。
なんにもねぇ。ほんとに何もなんもねぇ。
大晦日、俺は背中でオルガンを聴いている。
誰かが俺の家に放火しにきた。ガレージの俺のバイクが燃やされて爆発しちまった。
誰がやったなんてどうでもいい。
青白い炎が寒空に浮かんでいた。その光を見上げたら、それが月だったから。
俺は。
全部取り返してやるって決めたんだ。
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