一生懸命努力して、時間をかけて、労力を傾けて、時にはお金も掛けてやったことが、望む成果を得られなかったら一体どうだろうか? 逆に、あまり気持ちを込めた訳でもなく、軽い気持ちで、さしたる努力も要しないでおこなったことが、一つの成果を運んで来る場合もないとは言えない。運に恵まれたね(恵まれなかったね)、って話にしてしまえば、特に心には留めないで笑い話になる。でも、“成果”、を重要視するなら、前者には価値はなく、失敗例でしかなく、後者は成功に他ならない。ある意味では理想的ですらある。そんなことを考えながら、周囲を見回す。
成果主義の時代と言われて久しい。成果にこそ重きを置く傾向は、何かを行動する前に、その結果「自分は何を得られるか」を知りたがる志向を生み出した。例えば未知の映画ではなく、すでに評価され、感想の多くを占める傾向を得て、時にはあらすじを知った上で映画館に足を運ぶ。見る前に保障が欲しいのだ。同じ遊園地(テーマパーク)に行くなら知っていて確実な所を私達は選ぶ。行く前に保障が欲しい。ご飯食べに行くにしても何にしても、観劇でも、情報が先に得られてすでに色々を知ってから足を運ぶことが多くなった。保証書つきの娯楽、生活。それは、別の視点で見ると、すでにラストまで書かれたシナリオの中でただただ登場人物の一人を演じるみたい。整備され保証された道を安全に歩くだけ。ちょっと大げさに言うなら、果たしてそれを「生きている」と呼んでいいのだろうか、なんて思ったりもする。僕らの前に、今や、まったくの未知や、想像を越えた驚きや、完全な新鮮さなど、消滅してしまったかのようでもある。問題の解き方を知ってから問題に当たるみたいに、どう手をつけていいか分からない所から問題に当たるなんてことも経験出来なくなった。未来なんか分からない、と皆口々に言うが、本当は僕らは多くの場合で、始める前から結果を予測立てて知っているのではないか。僕らは、人生の殆どの時間を、すでに知っている結果に向かっているだけに過ぎない。未来は未知ではなく、すでに分かっている楽しみを、安心して分かった通りに生きているだけ。そして、思うのだが、「それでいいの?」ってお伝えしておきたいと思う。
成果を重要視するなら、それでいい、と堂々と答えればいいと思う。今は成果主義の時代だから皆がそうやって生きている。間違いないことが何より重要で、安全な道を歩んで行く。それはある意味では賢い選択でもあるし、責められるのもおかしい。正常なのは、普通なのは、今の時代はこっちかも。でも、もう一度心の中に、点滅するみたいに疑問符が浮かぶ。「それでいいの?」
演劇とは、一言で云うなら、この「それでいいの?」だと思っている。もちろん、演劇の世界だって社会の一部分だから、成果主義が侵食してきているのは感じている。何だか先に知っていることを、この世界の人間も行いがちだ。SNSで好評かどうかをチェックして足を運ぶかどうかを決める。でも、この世界は、もしも皆がそうなってしまったら、滅んでしまう世界だと私は思ってもいるのだ。だってやっぱり芸術だから。エンターテイメントでもあるけど、芸術の一端でもあると思う。だから、正常で普通で安全な間違いない、ラストシーンが解っていることの為に向かうのではなく、心底吃驚するような結果を目指して、まだ舗装されてない道とも言えない道を行くことも必要だし、誰かはやってかなきゃ行けない仕事だと思う。誰かっていうか、もしかしてあなたが。とか。もちろん、こんなことを書いている私は当然ですが。
話が長くなりましたが、楽園王ワークショップ(以下、WS)を行いますので募集をします。2月末開催です。劇団も長く続いていると、自分の手持ちのカードだけで勝負してしまいがちです。かつて勝ってきたカードの組み合わせではあります。けれど、長々と書いてきたように、どうにかそこから脱したいと、そうも思うのです。変化が欲しい。その為には、新しい人材の力が必要だと強く感じています。演劇とは総合芸術で、何人もの手と頭で創作をする場だから、人の力って大きい。そのような気持ちから、新しい誰かと出会える機会を作りたいと思い、このようなWSを開催しています。このWSからすぐに、4月の公演に出演するために作品稽古へ合流できる方も期待しています、が、まずはお試しで「楽園王」というカンパニーの稽古の現場を覗いてやろうって気持ちでも構いません。その後も、今年も来年も公演が決まっていますので、今、新しい方と顔合わせできることはとても有意義だと考えています。だから、どこか琴線に触れるところがあって、こいつらに手を貸してやろう、あるいは、ここで自分の次の何かを始めてやろう、って思ってくれるのなら、大変ありがたいです。えっ、私が求められてる!って錯覚してくれたらとても面白いと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
◎ 楽園王ワークショップ2018第1弾
2月25日(日)18時から22時まで。
場所はJR池袋駅東口から徒歩10分程度の稽古場です。
参加費1000円。※当日にお支払いいただきます。
稽古着をご持参下さい。土足禁止ですので靴は必要ありません。
WSの内容は、普段この劇団が稽古で行っていることを丁寧に行う前半。残り半分はテキスト(台本)を使用しての、新しいメニューを考えています。
年齢は18歳以上。舞台経験は問いません。
★☆★ 申し込みの際に、①お名前、②性別、③年齢、④ご職業(学校)、⑤簡単な自己紹介(プロフィールなど)、⑥写真(添付ファイル、写メでも構いません)を送信下さい。
○ 申し込み先、home@rakuenoh.tokyo(ホーム@ラクエンオウ・ドット・トーキョー)
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なお、この先に予定している楽園王の公演についても簡単に書いておきます。
① 4月11日(水)12日(木)@日暮里d-倉庫
ハイナーミュラー「ハムレットマシーン」フェスティバル参加公演
「ハムレットマシーン」(新演出作)
構成/演出◆長堀博士
稽古等詳細についてはWSの申し込み後にお話いたします。ちなみに、すでに昨年末のWSにて、幾人かの出演者が決定しています。楽園王が初めての方も多く、新しく入りやすい環境だと思います。
② 9月6日(木)-9日(日)@下北沢OFF・OFFシアター
「モノクロームのメメント・モリ」(新作)
作/演出◆長堀博士
③ 秋~冬には古典戯曲の新演出作も予定しています。
④ 来年3月19日(火)-21日(祝)@日暮里d-倉庫
「エレクトリックガーデン」(再演)
作/演出◆長堀博士
・ 最後に簡単に自己紹介です。楽園王の主宰で演出家の長堀博士は、まずこのようなWSのプロです。青山学院で平田オリザさんが始めたワークショップデザイナーの講座を履修し、本格的なWSの手法を学びました。今回のWSもそれをベースに行います。また、楽園王という劇団は活動が20年以上と長く、経験に裏打ちされた様々な稽古方法を実践してきています。それもWSに反映されます。楽園王とは、劇作家としての長堀博士が自分が書いた作品を上演するためにスタートした劇団です。しかしその後、コンクールなどで演出家としての優秀賞を受賞し、その影響で現在では古典戯曲や文学作品などを上演するカンパニーとしても知名度があります。今は、次のステップとして、シアターカンパニーとしての新しいチャレンジを行う段階だと考えていて、模索している最中です。最初の文章にも書きましたが、その為の新しい才能と出会いたいと願って、今回、こういう機会を作りました。どうぞよろしくお願いします。砂漠の中の渇望のように、誰かを求めています。ホームページはこちら、
楽園王主宰・演出家・劇作家、・ワークショップデザイナー 長堀博士